1「ハ、ハヒ」
ゆき「俺、中学校に入ってから、色々頑張ったんだよw運動とかも始めたし、勉強も頑張ったしw」
1「ソ、ソデシュカ」
ゆき「いやー懐かしいなー、そういえば1ちゃんは部活何やってるの?」
1「ビ、ビジュツ」
ゆき「ええええ、すっげぇええ!絵、見せて!描いて描いて!」
1「」
正直、苦手なノリでしたww
ゆきからの口撃をコミュ障な返事でボソボソと返していると、何時の間にか夜に。
その日は、ここで夕ご飯をご馳走になりました。
帰るとき、ゆきが送ってくれました。
かえるや、虫の音が懐かしかった。暗いあぜ道を二人で並んで歩きました。
二人でテレビを見ながらスイカを食べていると、ゆきが「部屋を見たい」と言い出しました。
別に断る理由もないか…。と思い、案内すると、何故かゆきは「すげーw」を連発していました。
今思えば、緊張してぶっきらぼうになっていた私を、解そうとしていてくれたのかもw
ゆきは一通り机やポスターなんかを見た後、本棚に目をつけました。
ゆき「1ってこんな難しい小説も読むんだーすげー」
勝手に漁っていくゆき。
その手が、ファッション雑誌の前で止まりました。
すると、今まで口を挟む隙もなく話していた声が、ぴたりと止みました。
ゆきはおもむろに一冊雑誌を抜き、興味深そうにしげしげと見つめました。
ゆき「…すげー、都会の子ってこんな派手な格好してるんだねw」
1「いやいや、ここの女の子もこんな感じじゃないかな…」
ゆき「いやー、多分違うと思うw町には、こんな子いっぱいいる?」
1「うん。皆引くほどおしゃれ」
ゆき「…1も、こんな格好する?」
ゆきが見せてきたのは、花柄やピンク、レースといったいかにも女の子っぽい服のページ。
1「まあ、ここまで派手じゃないけど…」
ゆき「へー。すげー」
な に が ? 馬鹿にしてるのか?
20分くらい、私をほったらかしにして、ゆきは雑誌を読み続けました。
その横顔は、どことなく嬉しそうな、楽しそうなかんじがしました。
雰囲気に圧倒されて、何も言えないでいると、おばちゃんから声をかけられました。
ゆきは、ビクっとして、慌てて本棚に雑誌を戻しました。
少し冗談めかして聞くと、ゆきは何故か眉間に皺を寄せ、「うーん?」と言っていました。
結局、ゆきはそのまま、そそくさと帰ってしまいました。
興奮するよ
ゆきは朝から昼は部活に行き、昼ご飯のころには帰ってきました。
昔みたいに一緒にご飯を食べ、漫画なんかを読んだりしていくうちに、緊張も解けていきました。
ゆきは驚くほど頭がよく、勉強なんかも見てもらいました。
男の子とこんな夏休みを過ごしたことはなかったので、毎日が新鮮でしたw
体育館の外から、ちらっとゆきを見てみると、彼は少し細い体を揺らしながら、一生懸命プレーしていました。
もう、なんというか、かなり格好よかったw
悔しいですが、喪女は簡単に乙女心にwwww
しかし、あれです。ゆきは格好よく、頭もよく、人当たりも良い。
どうせライバルなんて山のようにいるのだろうと思うと、なんか、恋に落ちる寸前で自制がかかりました。
ある日、割と近くで夏祭りがあるのだとおばちゃんが言ってきました。
おば「ゆき君と二人で行ってこんねwwwww」
1「」
おば「浴衣貸してあげるからwwwww」
君のように、勘のいいおばちゃんは嫌いだよ…。
1「あのさー」
ゆき「んー?」
1「××で夏祭りあるみたい」
ゆき「あー、知ってるよ。行こうか」
1「」
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
喪女、初めて男子に夏祭りのお誘いを受けるwwwwwwwwww
1「あ、じゃー行こう」
という全く可愛げのない言葉で返してしまいましたw
夏祭り当日、私は約束どおりおばちゃんに浴衣を借りました。
白地にピンクの花があるやつで、すごく綺麗で高そうでした。喪女にはモッタイネ。
おばちゃんは張り切って、似た生地の巾着も用意してくれました。
さらにさらに、どこで学んだのか、あのうなじが見える色っぽいお団子まで結ってくれましたw
おばちゃん、結婚してくれ…。
恥ずかしくて恥ずかしくて、消えたかったw
ゆきはポカンとしたまま、じろじろと上から下まで見つめてきました。
1「いや、見すぎです」
ゆき「すげー、1ちゃんじゃないみたいww誰w」
1「…」
そりゃ、おばちゃんのお節介で人生初のお化粧までしてますし。
夏祭りの間、ゆきはちらちらと髪を見てきたり、下駄を見てきたり…。
まさか。
いやいやいや、まさかって何だwwww
もう、死ぬほどドキドキしましたw柄にもなくww
ゆきにたこ焼きやら、カキ氷やら勧められても、全く喉を通らないほどでしたw
あああ、思い出しても恥ずかしいですw
気になったのは、ゆきが、ずっと私を見ていること。
たまにゆきの方に顔を向けると、パッと顔をそらすのですが、視線は痛いほど刺さってきました。
ドギマギしながら、おばちゃんの家へ帰ろうとすると、ゆきが申し訳なさそうに言いました。
ゆき「なぁ、1ちゃんまだ時間大丈夫?」
ゆき「いやぁ…。ちょっと家こない?」
1「何で?」
ゆき「いや…」
どうも歯切れが悪いゆき。確かに予定はないので、私はのこのこ付いていきました。
家にはお婆ちゃんがいましたし。
何だ、何だと焦っていると、ゆきはいきなり部屋の真ん中に正座しました。
1「え、どうしたw」
ゆき「…ちょっと大事な話ある」
ゆきは何時になく深刻な顔をして、唇を噛んでいました。
無言のまま、何分か経ちました。
ゆきは私をスルーして、たんすへ。しばらくゴソゴソと中をかき混ぜて
ゆき「…1ちゃんさぁ、覚えてる?」
1「何を」
ゆき「引越しのときさぁ、俺、1ちゃんに服貰ったよね」
ゆきは恥ずかしそうに俯いたまま言いました。
1「覚えてるよ。いらないからスカート押し付けたね」
ゆき「うん…」
1「だから何?」
ゆきの動きがぴたっと止まりました。それからゆっくり深呼吸を繰り返しました。
ゆきはおもむろに、たんすからビニール袋を出してきました。
小さなスカートでした。私が10歳の頃にはいていた、ゆきにあげたものでした。
1「まだ持ってたの?」
ゆきはぎこちなく頷きました。スカートは皺一つなく、綺麗なままでした。
ゆき「…」
ゆきは暫く黙っていました。いらいらして、少し強めに先を促すと
決心したように言いました。
「1ちゃん、その浴衣、俺に着せて」
はい?
面白い
昔から、女の子の服に興味があった
私から貰ったスカートを一回はいてみたとき、その気持ちに気付いたんだそう。
1ちゃんの浴衣が綺麗で、我慢が出来なくなった。
一回で良いから俺もこういうのを着てみたい。
告白かと思っていた私涙目wwwww
もう呆然でした。
ゆき「そうなるね。でも、1ちゃんになら話せると思って」
1「…」
ゆき「ごめんね、引くよね」
1「いやいやいや」
確かに驚きはありました。しかし、嫌悪感はありませんでした。
むしろ、美形のゆきが浴衣を着たほうがいいような…。
1「…いや、別に。いいけど」
ゆき「まっじで!!!!?やったあああ」
1「明日、明日の夕方ならいいよ」
ゆき「うん!ありがとう1ちゃん!大好き!」
ゆきは見たこともないくらい、喜んでいました。
その姿がすごく無邪気で、不思議なくらい納得してしまいました。
「ゆきは、男の子だけど男の子じゃないんだなー」と
窓から直接部屋にあがらせ、浴衣を広げて見せました。
ゆきは、溜息をついて、うっとりしていました。
1「着かた、分かる分けないよね?」
ゆき「うん、分からん…」
仕方がなく、服を脱いでもらって、私が着付けをしました。
恋に落ちかけた男のハダカでしたが、全くドキドキしなかったなw
ゆきは感動したように、言葉を詰まらせていました。何度も何度もくるくる回っていました。
しかし、いくら美形といえども、男にそのまま浴衣を着せたって、ただの「女物の浴衣を着たゆき」で何となく、脱力して笑ってしまいましたw
ゆきもそのことに気付いたようでしたが、化粧やら髪やらは注文してきませんでした。
まだ、少し抵抗感があったのかなー。
ゆき「いや、多分違う。別に、男が好きだとかはない」
ゆき「ただ、女の子の服が着たいだけなんだと思うw」
すっきりしたように、彼は笑っていました。
結局ゆきは自分の女装姿を一時間ほど堪能して、帰りました。
1とのラブコメ期待してた俺はやっぱり純粋な人間だったようだ・・・・