お互いの両親に紹介もして、形式に則った結納まで済ませてた。
招待状も出して、披露宴の打ち合わせもほぼ終わって、あとは今のうちに車の免許を取ろうと自動車学校に通ってる段階だった。
彼と彼のご両親の意向で、仕事も退職済みだった。
彼の実家が会社経営してて、そこで働くことになってたから。
彼の父親が、息子をなんとか説得するからこのまま式を挙げてほしいと言ってきた。
披露宴には彼の父親の自慢の交流関係の人をたくさん呼んでたから。
籍は入れずに離婚するならそのあとで、とか言って。
彼とは中学時代から10年付き合って、大学時代離れ離れだった遠距離恋愛を乗り越えて、ようやく結婚できると思ってたからショックで、しかも相手が親友だったから余計にきつかった。
あんまり辛くて死にたいと思って、マンションの最上階まで上がったこともあった。
駅のホームに入ってくる電車に吸い込まれそうになったこともあった。
でも結局死ぬ勇気がなくて、でも地元にいられなくて母の年の離れた妹が独身のキャリアウーマンだったんだけど、昔からお姉ちゃんお姉ちゃんって慕ってたその叔母さんを頼って地元を出た。
それでも地元に帰ると思い出してしまうので、両親に来てもらうことはあっても自分から帰ることは無かった。
でも今年父が亡くなって、夫と子供たちを連れて久しぶりに地元に帰った時、焼香の列に元彼がいた。
よく顔を出せたもんだな、とは不思議と思わなかった。
もう全てが過去のことだと気持ちに余裕すら出来ていた。
夫には全て事情は話してあるので、夫に断って少し席を外して元彼と話しをした。
元彼は開口一番、当時のことを再び謝った。
そして「幸せそうで良かった。俺の方はきっと罰が当たったんだな」って。
それだけ言って帰って行った。
“罰が当たった”って言葉が気になって、葬儀後母に聞いてみた。
地元の同じ校区内のことだから、母にも色々耳に入ってくる。
元親友は死産だったそうだ。しかもその後、癌で長い間転移を繰り返し数年前に亡くなってた。
両親とは、父親の顔に泥を塗ったとかで勘当されてる状態だそうだ。
そこまで行ったら確かに“罰が当たった”んだろうか。
にしても、そこまで悲惨な状況だったら余計に私はもう地元には帰りたくないかな。
母には申し訳ないけれど。