どうせ私にクリスマスはない、正月もない、友達もいないならこれだけは得る権利がある
と、家の近所の輸入雑貨店に行った。
ずっと前から気になっていた
「一番デカイの下さい」
一人暮らしでパーティーの予定もないのに私は自分の為だけにツリーを購入したw
自分で稼いだ金で、自分の為だけのツリーを買う
もうそれでいいと思ったww
時刻は夜の10時くらい
息が白くなるなか、私はハーハー熱くなりながら自宅までツリーを引きずって帰った。
家に帰ったらマキコさんに写メを送ろう
きっと馬廘じゃねーのと言われる
そう考えたら年末年始に対する勇気が沸いて来た。
この時の冬の匂いは今でもよく覚えている。
今から仕事に行ってきます!
今から寝るまでの間続き書いていこうと思います
見てくれている方いつもありがとうございます
では以下年末年始編です
日を追うごとに居酒屋の方では忘年会も増える。
忙しくて昼飯を食う暇もなく、雑貨屋が終わり居酒屋に移動するまでの間、毎日走りながらちくわ食ってたww
光熱費を払う暇もない。
ガスが泊まった。
10日くらい毎日早朝銭湯に通ったww
私生活的には最悪だったが、仕事的には割と頑張ってたと思う。
そんな私にキリストが味方したのか、予想外の出来事が起こった。
「1さん、悪いけど、〇〇さん1さんの休みになってる日にどうしても出れないらしくて、出勤してくれない?代わりに明日は急遽お休みって事にするから」
私はポカンとしたまま、無言で頷いたと思う。
完全に諦めていたのに、イブが休みになってしまった。
しかし、前日に言われても、今更予定が組めない。
どうしよう。
でも嬉しい。
更にラッキーな事にこの年のクリスマスは、居酒屋が定休日の曜日だった。
本当に久々の全休だった。
その日の居酒屋に向かう途中の足どりは軽かった。
出勤してすぐに、マキコさんにこの事を話した。
マキコ「え!昼も」
1「はいwでもする事ないんですよね、マキコさん明日昼飯でも食いに行きませんか?」
マキコ「昼飯じゃなくて、クリスマスパーティーするよ!マキコが飯作るから!」
1「え?でもマキコさん修三さんと二人で過ごさなくていいんですか?」
マキコ「いいのよ、修三とは25日にすれば。修三とは、いつでもゆっくり出来るんだから」
マキコさんは前々から、クリスマスは修三さんと家で祝うと言っていたのでまさか、こんなふうに言ってもらえると思ってなかった
言われて考えてみたら、最後にマキコさんとゆっくり飲んだのは随分前だった。
クリスマスツリーを買った事によってクリスマスに敬意が払えていたのか
その年のクリスマスは、何だか私の味方だった
駅のモールで、シャンパンとクリスマスデザインのお菓子をいっぱい
近所の美味しいと有名なケーキ屋で、二人では食べ切れない程デカイケーキを、奮発して買った。
かなりテンションが高かったのである。
準備は万端だった。
が、しかし
待てどくらせどマキコさんは来ない。
4時の約束だったのに、5時を過ぎても連絡も無い。
冬の日没は早い。部屋が暗くなっていった。
クリスマスツリーの電気だけがチラチラしてる。
5時半を回った頃、不安になった私はようやくマキコさんに電話した
(今考えればもっと早くしろよ、と思う)
マキコ「1何やってんのよ!!?」
1「え…!」
マキコ「もうとっくにご飯出来たよ!」
1「え、マキコさん、今どこにいるんですか!?」
マキコ「はあ?家に決まってんじゃん」
1「え!!今日マキコさんちでするんですか!?」
マキコ「あたりまえじゃん」
1「でも…ツリーはうちに」
マキコ「この前写真で見た」
1「…でも二万九千円もした、」
マキコ「早く来てよ」
プッツーツー……
結局、私のツリーはパーティーでは活躍しないまま自宅に置き去りにされ
ケーキとシャンパンその他色々クリスマスグッズを抱えてヨロヨロしながらマキコさんちまで自転車を走らせた。
ビールがたくさん、腕まくりをして料理を作るマキコさんがあった。
ツリーは無いが、パーティーだ!
私はわくわくしながら、マキコさんに聞いた。
1「マキコさん!何作ってるんですか?」
マキコ「とうがん鍋」
【解説】
「とうがん」とは、大根に似た野菜である。大根よりも柔らかく味が良く染み、煮物などに最適である
1「とうがんですか…」
マキコ「とうがんよ」
1「…でも普通、クリスマスつったらチキンとかですよね」
マキコ「チキン入ってるよ」
とうがんの隙間に、鶏肉が煮えていた。
1「マキコさん、今、レンジであっためてるのは?」
マキコ「中華ちまき」
1「クリスマスなのに、中華ちまき」
マキコ「好きでしょ」
1「好きですけど」
マキコ「ん?それ何?」
1「あ!マキコさん、モールで買ってきたんですよ!お土産です!」
マキコさんへのお土産はサンタクロースの形の真っ赤な可愛い砂糖菓子だった。
お菓子というよりは、クリスマスっぽく飾っておくような
マキコ「へー(ガサガサガサガ)」
マキコさん即開封
マキコ「ガブ!!(サンタの頭をかじる)」
1「…!!!」
マキコ「んー……!チェリー味!!」
1「チェリー味ですか……」
首無しのサンタが残り、オブジェは消えた
マキコ「ふーん…(再び即開封)甘い!!やる!焼酎!!」
結局、マキコさんとクリスマスぽい事は何も出来なかったが、なんだかんだ凄く楽しかった。
ご飯を食べた後、マキコさんと飲みながら色々話をした。
マキコ「高校の頃はね、親と仲悪かったのよ、一年くらい口聞いて無かった」
1「なんでですか?」
マキコ「付き合ってた人が居たんだけど、その人と付き合うな!って言われたのね、でもその人と付き合ってるなんて一回も言った事無かったのに。何で知ってるのかと思ったら、マキコの日記をずっと勝手に読まれてたんだ」
1「…」
マキコ「そっからしばらく、人を信用出来なかったね」
しかし、今マキコさんは両親と、とても仲良しだという。
マキコさんは言った。
和解するのに、時間は掛かった。
でも、お互いに、本当の本当の本音を言い合わなきゃ意味がないから無駄な時間だったとは思わない、と
それから、マキコさんとカラオケに行き、5時間くらい歌った。
翌日、私の声は、椿鬼奴みたいになり、一週間くらい戻らなかった
オマケにマキコさんのエピソードを一つ
マキコさんは下ネタが大好きだった
私はTSUTAYAが大好きだった
そんな私達が、ある時、DVDの話を、していた。
1「マキコさん映画とか見るんですか」
マキコ「見たいねあるのよ!超エ口いやつ」
1「なんですか」
マキコ「えーと、杉本あやが出てたー」
1「ああ〜、なんでしたっけ」
マキコ「…〜と蛇」
1「なんでしたっけ」
マキコ「〜〜…と蛇」
1「なんでしたっけ」
マキコ「そうだ!ハブと蛇た!!」
1「両方蛇じゃないですか!!?」
A.花と蛇
これは19歳の冬?
諸事情は読み手の技量と読解力が試されるということで。
にちゃんのびっぷらまで来て正論振りかざして水を刺す人ってなんなの?
なんか色々すみません…
私も最初年齢をズラそうとか迷ったんですが、矛盾が出てきてしまいそうなのでこのまま書きました
過去の話だしセーフかなあ、と軽く思って
自分的にも出来れば最後まで書いてみたいので、お言葉に甘えて続きやっていこうと思います
でもこれ以上問題が出ないように出来るだけ早く終わらせたいと思います
今日か明日までには!
店長が独立の為、藤井さんが就職の為に辞めた
私がここに来てもうすぐ一年、半分のメンバーが入れ替わっていた
仲良しメンバーで残ったのはついに私、マキコさん、翔、の三人
話す時の輪が小さくなったのを日を追うごとに実感していった。
雑貨屋も、怒られながらも続けていたが、この時、私は3月いっぱいで雑貨屋辞めようかな…と思っていた
年末年始忙しかったぶんの燃え尽き症候群でもあると思うが、居酒屋優先の生活に戻りたい、という感情もあると思う。
なんだか寂しくてこれ以上楽しかった生活を変えたくなくて、楽な方に流されたい、という緩みが私の中に生まれていた
雑貨屋の女性の先輩(ちっちゃくて可愛くて優しくて、猫村さんみたいだったから以下猫村さん)が、なんだか嬉しそうに私に話し掛けてきた
猫村「ねえねえ!1さんがかいたコップ!売れたよ!」
私がかいたコップ?
最初訳がわからずに居たが、猫村さんの説明でようやく思い出した。
商品の一つに、自分でかいたイラストをマグカップ出来るというオリジナルマグカップキットがあったんだが
こういう風に仕上がる、というサンプルに私のかいたイラストで作ったコップを置いておいたのだ
それをレジに持ってきたお客様が居たという
猫村さんが
「すみません…それは商品じゃないんです」
と伝えたら
「この絵が好きだから、いくらでもいいので売って欲しい」
と言われ、売れたという事だった
私はずっとポカンとしていた
作業も遅いし、店長に怒られてばかり
毎日びくびくしながら、行きたくねー、と思いながら居る私が、ここに勤めている意味
私はこの店で、初めて役に立ったのだろうか…?
帰り道、歩きながら考えていた。
色々考えながら、思い出したのは、確かに確かに小さい頃は私は絵を描くのが好きだった事。
コンクールの為にデッサンや色を指定されたり、描きたくない物をかかされるようになる前は確かに私は絵を描くのが好きだった
専門に居た頃に、この事を思い出した事は一度も無かったのに
するとマキコさんは
「好きじゃん、あんた絵描くの。あんた絵描いてる時真剣に楽しそうだから、そん時だけはなんかイタズラできないもんww」
私は居酒屋でも看板やメニューの挿絵を描いていたので、マキコさんは私が絵を描いているのを見た事がある。
マキコさんに楽しそうだ、と言われたが、私はただ店長に描いて、と言われたから描いてるだけのつもりだった
専門を辞めた時点で、私の「絵」という物は終わったと思っていた。
この先の人生は絵にまったく関わらない道を進む。
(大袈裟かもしれないが、小学生時代と高校二年間くらいは本当割と義務的に絵を習っていたので、好きとは思わなかったが、絵が自分の中を占める割合は大きかった)
しかし、働きながらも、私はなんだかんだ絵を描いている
しかも専門や昔の頃よりも楽しそうらしい
専門から社会、というフィールドに移って、絵がわずかながらも役に立っている
今までなんとなくやってた「絵」という物が少しは活かされている
ずっと不安だった
「専門を辞めて、まともに働いている人は少ない」
という言葉
この時、私はやっと、悪い方には向かっていないはずだ
という確信が持てるようになった。
雑貨屋を3月いっぱいで辞めようと思っていた事は、この時はもう忘れていた。
そんなある日、店内で作業をしていたら店長にレジの中に呼ばれた。
また怒られる…とドキドキしながら向かったら、パソコンを向いていた店長に尋ねられた
店長「ねえ、次入れる商品なんだけど、どっちがいいと思う?」
1「え!」
店長「え!じゃなくて、こっちとこっち、どっちがいいかな」
1「えー、こっちですかね…」
店長「うーん、でもこっちは去年入れた時あんまり売れなかったんだよね」
1「じゃ、じゃあこっちですかね?」
店長「でも最初はこっちがいいと思ったんでしょ?真剣に考えてる?」
何なんだ…新手のイジメかと思いながらも話し合い、結局店長押しの方に決まり、作業に戻ろうとした
すると、ぽつり、と店長が呟いた
「1さんがポップかいた商品、よく売れるよ」
店長に、初めて、褒められたのだ
と気付くまでに時間が掛かった。
冷静を装っていたが、内心天井まで跳ね上がりたい位嬉しかった
やったやったやったぞー!という心の声が私のやる気のエンジンをオンにしたのであった。
今度はいい意味で忙しくて、もう寂しいという気持ちや辞めたいという気持ちは無かった。
ここまでは順調だったが、その年すっかり暖かくなってきた頃に掛かってきた一本の電話が
私の運命を変えることになった
始めは軽い近況報告だったが、何かいつもと雰囲気が違う事は感じていた
少しの沈黙の後、一切冗談の無い声で姉が呟いた
「1さ、もう学校行ってないのに、いつまでそっちに居るの?」
いきなりそんな事を言われ、カチンときた私は、ちょっとキレ気味に仕事やってるし辞めるわけにはいかない
仕送り貰ってるわけじゃないんだから、とやかく言われたくない、と
そんな私の言い分に、姉は私よりも更にキレ気味の声で言った。
「お母さん達黙ってるからあんたは知らないだろうけど!こっちは今大変なんだよ!!それなのに何であんただけ勝手に過ごしてるの!?」
何の話か分からず動揺していたら、姉が少づつ話し始めた。
姉から聞かされた内容を私は今まで一切知らなかった
某食品会社の汚染米事件。
うちの実家はお菓子会社を経営してて、米粉を使ったお菓子も多く作っている
その事件後、その某食品会社から仕入れた物を使っている疑惑がある会社としてうちの会社の名前が新聞に載ってしまったらしい
もちろんうちの会社は某食品会社の米粉なんて使っていない
記事は嘘だった。
しかし、新聞を見た取引先がいくつもうちとの契約を打ち切ってきたという
そのせいで会社は大赤字。
お母さんは体重が10キロ近く減り、お父さんはノイローゼ気味
更に悪い事は重なるようで、おばあちゃんが交通事故にあった
幸い命に別状は無かったが、歳なのでかなり気落ちしている
私はこの年、正月実家に帰らなかったので、何も知らなかった。
電話で話す両親はいつも元気そうに、仕事頑張ってる?としか言ってこないから。
頭をハンマーで毆られたみたいな衝撃だった
帰った方がいいのだろうか。
いや帰った方がいいに決まっている。
今家賃や光熱費などの必要経費は、実家に帰れば要らなくなるので、その分家に入れられるし、何より精神面で傍に居て支えてあげられる
でも正直な本音は帰りたくなかった。
最初に書いた通り、私は社会に出れば本当に仲のいい友達と呼べる人なんてそう出来ないと思っていた
マキコさんと仲良くなってその考えは少しづつ変わっていったが
結局、近くにいなければ、マキコさんとも次第に疎遠になっていくだろうと思った。
高校で別れたり進学や就職で別れた友人達とは必ず、「すぐに会える」「絶対に年に何回か集まろう」と言うが、現実それはあまり叶ってこなかった
別に縁が切れるわけではないが、お互いに忙しかったり、新しい生活優先になったりで、都合が合わなくなってくる
何回も断っているうちに、お互いにもう諦めてしまう。
諦めてしまえば、会わなくても、平気になってしまう。
マキコさんとそうなるのが私は怖かった。
その日の夜は眠れなかった。
「なんかあったの?」
でも私はこの事をマキコさんに話せなかった。
マキコさんは大人で、すごく家族想いな人だ
(マキコさんも遠くはないけど出身はこの町ではないが、必ず年に何回かは無理矢理時間を作って帰省したり、家族をこっちに呼んだりしている)
マキコさんに話したら、絶対に帰ってあげた方がいいと言う事は分かっていた。
マキコさんにそう言われてしまえば、私にはもうなす術が無くなる。
ただ、お姉ちゃんと電話でちょっと喧嘩した、とだけ言って話題を変えたが
結構鋭いマキコさんは真顔だった。
他にも何かありそうな事に気づいていたと思うが、私がそれ以上何も話そうとしないので
マキコさんも追求はして来なかった。
この日から、本当に少ーしづつだが、マキコさんとの関係がギクシャクしていった。