誰にも言えなかったのは、私の中では「帰りたくない 」という気持ちがあったので
誰かに「帰った方がいい」「帰りなさい」言わるのが怖かったから
その意見が正論で、自分が勝手な事も自覚していたので余計に話せず逃げていた。
マキコさんはまだ私を疑っていた。
居酒屋の時みんなで馬廘話してて、私は普通にしているつもりでも
「1今日ノリ悪いね、何かあったっしょ?」
など何回も聞いてきていた。
「別に何もないっすよ、別にのってるじゃないすか」
と、少し苛立った返しをしてしまう事もあった。
マキコさんはそれでも冗談で返してくれたが
別に何も悪くないマキコさんに八つ当たりしてしまい、帰宅してから自己嫌悪していた。
そうなるのが嫌で、忙しいふりをして若干マキコさんを避けたりもした
話す時はいつも通り、ふざけたり冗談言ったりして、避けてるとは悟られないよう自分なりに頑張っていたが
上辺の態度が嫌いなマキコさんにはそんな物通用しなかった
居酒屋に新人さんが入ったり、雑貨屋も忙しかったりで、「何か」が変化している事に私は一切気づいていなかった。
そんなある日、雑貨屋の終わりに、たまたま藤井さんに会った。
藤井さんは2月いっぱいで辞めた後、就職して美容師になっていた。
久しぶりだったので軽く話していたら藤井さんが思い出したように言った
「あ!1ちゃんこの前は来なかったけど、今度はちゃんと休み取って参加してよ〜!」
藤井さんが言ってる内容が分からずにいたら藤井さんも不思議そうにしていた
嫌な予感がして心臓がバクバクしていた
「ほら…この前、久々にマキコさんと修三さんと翔と俺、集まって、1ちゃんは仕事だから来れないって」
そんな事があったなんて、私は一切聞かされていなかった。
例え本当に仕事で来れない時も、いつもなら必ず誘いの声は掛けられる
マキコさんはどんな飲み会も絶対にいつも私を最初に誘ってくれていた。
むしろ
「今度の日曜さ〜〇〇行きたいんだけど、他に誰誘おっか」
など、私とマキコさんで決めるみたいな感じで
藤井さんは変な表情をしていたが、私は絶対に悟られたくないと、必死になりながら笑ってごまかし
「今から居酒屋だからまたメールします」 と言って去ってしまった。
藤井さんと別れて10メートルくらいたった所で私は自分が笑っていない事に気付いた。
なんとか出勤したが、正直頭の中がぐちゃぐちゃで、帰りたかった。
制服に着替えて、店に向かってる途中、マキコさんと誰かが喋っていた。
私に気付いたマキコさんが
「1おはよ!」
と言ってきた。
いつもと変わらず笑って声を掛けてくれたが、その時の私は疑いの心でいっぱいだった。
本当は私に苛ついてるんじゃないのか、嫌っているんじゃないのか
義理で仲良さそうにしてるんじゃないのか
マキコさんの事はよく分かっているはずなのに
そんな被害妄想でいっぱいだった。
マキコさんの挨拶に、私は目を合わせないまま「おはようございます」とだけ言って素通りした。
後ろでシーンとしたマキコさん達の感じが伝わってきたが、私は表情を確かめる事が出来ず、そのまま出勤した。
この日、私はマキコさんと必要以上の事は話さなかった。
マキコさん以外の人とは普通に話していたので、様子がおかしいとかは周りには思われなかったと思う。
ただ、終わった後
いつもならマキコさんとジュース飲んだり喋ったりを毎日していたのだが
その日、私は何も言わずに先に帰った。
完全に一時の感情による物。
冷静になれば、色々事情があったのか、とも思えたのに。
私はガキだった。
この日、私は完全に判断を間違えたのだった。
マキコさんは私にほとんど話掛けてこなくなった。
私もマキコさんと話さなかった。
お互いに他の人とは普通に話していたので、喧嘩みたいではなかった。
まるで、初めから仲良くない人達みたいな感じになっていた。
仕事中の私は完全に以前の人間関係に冷めた私に戻って、こんなもんだ、とふわふわした、地に足が着かないような感じで過ごしていが
一日が終わって、家に帰って、鍵を閉めた瞬間、毎日寝るまで号泣していた。
本当この時期、多分一ヶ月くらい、毎日帰ってから目茶苦茶に泣いていた
多分ちょっと頭おかしくなってたと思うww
本当に、本当にこの一ヶ月は地獄だった。
居酒屋で、他の人とは普通に話していたが、ふと
「なんか、最近、全然言葉を発してないな」
と思う事が多くなった。
それだけ今までマキコさんと話して、笑っていたのだと思い知った。
家で泣いてる時、色んな事を思い出していた。
飲み会たのしかったなー、とかクリスマスたのしかったなー、とか
泣いてるのに、思い出して笑ったりしていたww
昼は冷めてて、夜は熱く泣き尽くした日々を過ごしていた6月の後半、多分最後の涙が尽きたのだろう
ふと
「しゃーない、地元帰るか」
と思った。
本当、仕方ない、と思った。
もうこの場所に縋り付く、理由が無くなってしまった。と
本当は、居酒屋も雑貨屋も好きになっていた。
前みたいにマキコさん達とみんなで仲良くしたかった。
でも、きっともう無理だ仕方ない、帰ろうと思ったきっかけはそれだけ。
本当に最後まで勝手だった。
7月いっぱいで居酒屋を辞める事を、涼子さんに伝えた。
マキコさんには、まだ言えなかった。
6月の終わり、一人で休憩してたら翔が話し掛けてきた
「1、7月で辞めるの?」
涼子さんから聞いたらしい。凄いびっくりしてた。
なんか笑ったww
1「うん」
翔「えーやだなあ寂しいじゃん…」
1「ありがとうwもう疲れちゃってさー」
翔「ていうかさーなんかあったのマキコさんも心配してるんだよ」
マキコさん、という単語が出てきてドキっとした私は、思わず強引に話題を変えた
1「いやいや!それより、私三日後誕生日なんだよ!何かちょうだい!」
翔「あ!そうじゃん!いいよ!何がいい?」
1「え!本当に何かくれんの?いーよw冗談だよw」
翔「いーよいーよ!あげるよ!ww」
1「マジで!じゃあオールドファッションw」
翔「オールドファッションww了解ww」
私とマキコさんが話さなくなってからマキコさんと仲良い翔とも必然的にあまり絡まなくなっていたので久々に翔とゆっくり話した
やっぱりここは楽しいな〜辞めたくね〜な〜
と思ったがもう7月で辞めるのは決まっている
人も募集してる。
気楽になった次は、やっぱり寂しくなった
そして私の誕生日。
居酒屋に出勤したら、涼子さんに言われた
「1、7月いっぱいていう事になってたけど、思ってたより早く人集まりそうだから、もし早めに終わりたいなら6月いっぱいでも大丈夫そうだよ。どうする?」
最初私は出来るだけ早く辞めたい、と言っていた
とにかくマキコさんと口を利かない日々がしんどかったし、7月は雑貨屋も忙しいので
だから私は涼子さんの問いにお願いしますと言った
最終的に7月頭数日だけ出勤する事になったが、私の出勤日数はもう片手で余るくらいに迫っていた。
そしてその日もいつも通り終了して、帰ろうとしたら翔がミスタードーナツをくれた
翔「昼に買ったから時間経っちゃったww頑張って今日中に食べて」
オールドファッション以外にもチョコファッションやポンデリングなど大量に入った袋を買ってきてくれて とても感動した。
辞める事が益々寂しくなってきた。
なんか色んな物が湧き上がってきたんだよね
寂しい、嬉しい、辛い、懐かしい、でも悪い気分じゃない
痛いけど優しいみたいな
そんなホクホクした気持ちでドーナツを抱えて家路についている途中
着信が鳴った。
ドーナツやら荷物やら抱えて手が離せない状態だったので家に着くまで私は電話を無視して、部屋で腰を下ろして電話を確認した
マキコさんだった。
酷い日は挨拶すらしなかった事もある
なのに、不思議と、気まずいという気持ちも、緊張するという気持ちも湧かず
もう飛び上がる勢いで慌ててマキコさんに電話を掛け直した。
きっと諦めた心の奥底で、臆病だった私は待っていたのだと思う
一番最初に話し掛けてくれた時みたいにまたマキコさんが唐突に脈絡のない話をしてくれるのを
自分からは何も言えないくせに、本当ヘタレで勝手な奴でした。
1「マキコさんどうしたんですか?」
マキコ「ちょっと!今どこいんの?」
1「え、え、え、家です!」
マキコ「はあ?なんでよ?」
1「え、え、え?家じゃだめですか?!」
マキコ「当たり前よ!今日あんた誕生日じゃん!もう、今から行くから家の前出ててよ!」
ちょっと意味が分からなかったが、マキコさんが来るというのでそんな事考えてる余裕も無く、居酒屋の制服のままでマンションのエレベーター降りて家の前出た。
数分後、単車に乗ったマキコさんが、でっかい紙袋を持って走りにくそうにやってきた
1「マキコさん?どうしたんですか!?」
マキコ「どうもこうも、あんたはもー…!はいこれマキコと修三から」
1「ありがとうございます…マキコさん、あの、私、」
マキコ「ていうかあんた!6月いっぱいで辞めるんでしょ?(辞めるんでしょ?が優しかったww)涼子さんから聞いたよ」
1「は、はい、ゴメン、な」
マキコ「あーもういいのよ辞めるのは別に気にしなくて!!なんでマキコじゃなくて涼子さんに先に言うのよ!!」
1「え、あ、え?」
マキコ「なんでよりによって涼子さん!なんで涼子さんあーもうムカつく!!」
1「さ!!サーセンwwww」
そっからは普通に少し話して、マキコさんは帰っていった。
本当、今まで一月も口聞いて無かった事実なんて、無かった事のように私達は前通りに話した。
マキコさんから貰ったのは目茶苦茶可愛い、赤いランプだった。
この辺には無い、とあるショップの物だったので、当日用意した物でない事は分かった。
私はまたもや寝るまでずっと号泣してたが、今度は嬉し涙だった。
あともう1クライマックスで終わりなので、今度こそもう少々お待ち下さい
俺こういういかにも女っぽい葛藤ってめんどくさいとか思うし、普段どちらかというと嫌いなのに
なんだろう、なんか目から変な汁が・・・
切ねえ、だけど少しほんわかしてる自分がいる
最後にマキコさんに正直な気持ちを伝えてから別れていて欲しいな
ちょっと泣きそうになった
1です仕事終了しました
今からラストスパートかけたいと思います
ゆっくりでいいという温かいお言葉頂きましたが、多分今後もっと忙しくなって今以上に書く暇が無くなると思うので出来れば今夜終わらせたい…!
眠くない方お付き合い頂けたら嬉しいです
小さい花とケーキを貰い、帰ろうとすると、マキコさんに声を掛けられた
誕生日後は全くもって前通りマキコさんと超仲良しの関係に戻っていたww
「飲みにいこっか」
物凄い久しぶりの、マキコさんとの二人飲みだった。
マキコさんと二人だけで行った送別会は静かで穏やかだった。
たわいもない話で馬廘みたいに笑ったり、思いで話してまた笑ったり
そんなふうに話していたら、ふとマキコさんが呟いた
「マキコ、五年間この居酒屋で働いてんじゃん。今まで色んな子と仲良くなったけどさ、そん中でも、ここまで、休みの日とかクリスマスまで一緒に居たのはあんたが初めてだよ」
「毎日飲み行って、こんな笑ったのは、あんたが一番だったよ」
この時、私もです、と言いたかったが胸が詰まって言葉が出てこなかった。
嬉しいやら恥ずかしいやら酔っ払ってるやらで、私は変に笑って
やっとの思いでこう言った。
「私も、マキコさんみたいな人に出会ったのは初めです。多分この先も、マキコさんくらいの人には出会えないんだろうなー」
そんな私に、マキコさんは「当たり前よ!」と言って笑って
その後はまた馬廘みたいに飲んでかなり酔っ払った。
私達がけっこう出来上がってきた頃に、仕事が終わった修三さんも来た。
それから修三さんと三人で飲んで、深夜三人で歩いて帰った。
酔っ払ったマキコさんは私達の何メートルか先を歩き、その後ろで修三さんと私は並んで歩いていた。
その時、修三とこんな話をした。
修三「1ちゃんも、とうとう、あそこ(居酒屋)から居なくなっちゃうのか〜」
1「はい、寂しいです」
修三「マキコは、きっともっと寂しいと思うよ。オレはオレが居なくなっても1ちゃんがいるから大丈夫だと思ってたけど」
1「はい…」
修三「1ちゃん、1ちゃんはずっと、マキコの味方でいてあげてね。居酒屋辞めても、どこに行ってもずっと。マキコ1ちゃんの事大好きだから。」
ご機嫌に酔っ払いながらフラフラ歩いていたマキコさんを見つめながらこう言った修三さんの姿は今でもハッキリと思い出せる。
修三さんの言葉に、私はこれでもか、というくらいの首を大きく振って頷いた。