だから、そんななぎさを見てるのも聞くのも辛くて俺はとっさに言いました。
なぎさ:「・・・へ?」
泣ながら、ふへっみたいな感じで聞き返されました。
俺:「お前がまた普通に学校に来られるようになんとかするから」
根拠も自身もありませんでしたがなぎさのことを思うといてもたってもいられませんでした。
なぎさ:「・・・ぅぅん いいの」
俺:「何が?」
なぎさ:「もしどうにかなった時、いじめられる対象が他の人になったら私嫌だもん」
グスグス泣きながらそんなことを言ってたと思う。
自分であったいじめの対象が他の人に行くのが嫌だと。
なぎさ:「だから、なにもしなくていいよ」
そういってへへっと笑った。
なぎさ:「俺が私のこと気づいてくれたことだけで頑張れるから」
なぎさ:「だから、大丈夫だよ」
俺:「そんなこと知ったことではありません」
半沢直樹じゃないよ?
本当にいったんだからね?疑わないでね?
なぎさ:「・・ぇ」
俺:「お前なんか勘違いしてるやろ?」
俺:「なんとかするっていうのは、いじめをやめさせるってことよ?」
俺:「そこにお前が偶然いじめられてただけで、誰だろうといじめはやめさせるで?」
内心、大嘘。
なぎさがいじめられてなかったらそんな必タヒにいじめをどうにかしようとか思わない。
そして、その後、なぎさが笑いだした。
なぎさ:「あはは。相変わらず俺は馬鹿だねぇ」
俺:「なぬ!?」
なぎさ:「昔っからなんか理由つけて私のこと助けようとしてくれる」
俺:「まぁな!」
なぎさ:「ま、してくれるだけで、助かったのはほとんど無いけどねっ!」
俺:「上げて落とすなよ!」
なんかおかしくて笑った。
久しぶりに聞いたなぎさの本当の笑い声はなんか新鮮だった。
なぎさ:「来年は一緒のクラスになりたい」
俺:「まかせろ。ちゃんとクラスに来れるようにしてやる」
なぎさ:「うん まってる」
少し雑談した後電話を切った。
なぎさの前では大見得切ったけど
いざ、どうすればいいのか。
まーったくわかりませんでしたね(笑)
なぎさのことをどうしようか考えていたところに変熊がやってきた!
変熊:「○組潰しましょー!!」
俺:「物騒やな、お前!」
変熊:「いやぁ、まぁあの後もいろいろしらべてみたら主犯格のやつらがわかったんで」
俺:「百合香だろ?」
変熊:「おー、さすが! それにプラス紗希と明里と麻衣ですねー」
女子のいじめは陰湿なもんで基本的に固まらないと何もできない。
変熊は変熊のくせに変熊的にモテるのです。
あー、うまやらしぃ!
変熊:「そうっすよー」
俺:「えー」
変熊:「まぁそこは心配せんでください」
俺:「いじめてるやつと付き合ってるやつと供託すんのは、、、」
変熊:「なに言ってんすか。俺と付き合って、やっちゃいけないことをしてるんすよ? それを教えてやるのが彼氏ってもんでしょ?」
不覚にも俺は変熊に惚れた。
俺:「惚れた」
変熊:「あ、パスで!」
俺:「Σ(゚□゚`)」
そういって、なにやら準備するものがあるからスタコラサッサと帰っていった。
俺はとりあえずなぎさの担任に話を聞こうと職員室に乗り込んだ。
○組の先生に話があるというと、個別指導室に通された。
先生:「それて、話ってなぁに?」
なぎさの担任はまだ新米の若い女教師で誰からも好かれそうな感じでニコニコしていた。
俺は裏がありそうでその先生があんまり好かなかった。
俺:「まぁ、単刀直入でお聞きします。なぎさがいじめられてるのはご存知ですよね?」
先生:「え?」
俺:「しらばっくれんでくださいです。」
それでもお面でも被ってんのかってぐらいニコニコしながら答えてくる。
先生:「うちのクラスにいじめはありませんよ?」
俺:「そんなわけないでしょ。なぎさの机どうなってるかぐらい知ってるでしょ」
先生:「普通の机よ?」
俺:「は?」
俺:「・・・失礼します」
職員室を飛び出し、なぎさの教室へ。
なぎさの机をみると、変えられていた。
他の人同様に普通の机になっていた。
また急いで職員室までもどる。
先生:「どうでしたか?」
俺:「普通でした。でも、昨日までは穴だらけでゴミ突っ込まれてたのに!」
先生:「そんなことはありませんよ? 前からずっとあの通りですよ?」
ここで俺は返す言葉が無くなった。
というか、その先生には何を言っても無駄そうだった。
大人しく職員室を後にしてこれからどうするかを考えた。
といっても、なにも思い浮かばなかった。
帰ろうと昇降棟で靴を履き替えてたら後ろから肩を叩かれた。
なぎさだった。
なぎさ:「大丈夫?」
俺:「いや、なんもしてないぞ、まだ」
なぎさ:「いや、まぁ無理はせんでよ?」
俺:「自分に言っとけ」
なぎさ:「(・3・)」
俺:「その顔うぜぇ!」
久しぶりに登下校を一緒にした。
本当にあの時は楽しかった。
なぎさ:「あ、俺ってさ、好きな人いるの?」
俺:「好きな人? いない」
なぎさ:「えーおもしろくなーい」
俺:「やかましっ! そのうち作るわいね!」
なぎさ:「そん時は報告してねー」
なぎさ:「えーだって気になるじゃん」
俺:「まぁ、できた時ね」
とかなんとか話しながら帰宅。
辛いのを一生懸命我慢して頑張ってるんだなぁと思ったらはやくどうにかしたかった。
変熊:「なぎさちゃんを教室へ行かせてー」
俺:「はぃ?」
唐突に変熊からの提案。
変熊:「いじめってのは本人いないと証拠あんまりでてこないからさぁ」
というわけで、なぎさを教室へ。
行かせようと思ったが、そんなに甘くない!
なぎさ:「いやっ!」
ですよねー。拒否られました。
俺:「どーしても嫌?」
なぎさ:「いやだっ!」
行けというのも辛いのですが変熊がどうしても行かせろというのでがんばって説得。
なぎさは何回も拒否したのですが、最終的に根負けして嫌になったら逃げていいという条件で承諾。
それを変熊に報告。
変熊:「さすが、夫婦と呼ばれるだけありますねー(笑)」
俺:「泣かされてぇのかΣ(゚□゚`)」
変熊:「嫌です! とりあえず、これでたぶんいけます」
そして、なぎさが教室へ行く日と被せてそこからどうして行くかを話し合い。
とりあえず、唯一信頼できる俺の元担任のところへ。
俺:「康子ー」
康子:「誰が康子やっ!」
俺:「康子先生でした。 あの、お話があるんですけど」
康子:「あんたがあたしにお話とは珍しい」
俺:「○組にいじめがあるのご存知ですか?」
康子:「え? ごめん、あたしあのクラス担当してないから知らんのんよ」
大雑把に内容を説明する。
で、これからの予定を伝える。
俺:「ってことやるんですけど可能ですか?」
康子:「それあたしがやるの?」
俺:「ダメですか?」
康子:「ううん。任せなさい」
先生は笑顔で引き受けてくれた。
この先生だけは本当に熱心に生徒に働きかけてくれていた。
本当にいい人でした。
俺:「俺ですか?」
康子:「好きな子のために頑張るのはいいけどね」
好きな子。
夫婦とかは言われたことあるけど
好きな子と、言われたのは初めてだった。
俺:「やっぱり俺好きなんだと思いますか?」
康子:「違うの?」
俺:「さー、どーでしょ」
たぶん、俺はずっとなぎさのことが好きだったんだなぁと納得したのはこの時でした。
すいません!
軽く寝てました!
また夜再開します!
レスくれた人本当にありがとうです!
生活リズムがぐっだぐだなのでこの時間から再開します!
待ってくれてる人がいたことに感動です!
口調がイタいのは俺の人間性です(笑)
なぎさを教室にいかせる日になり
その時は確か、三時間目のお昼休み前の時間。
実際どんな風にいじめられてるのか、それを知るために授業をサボりベランダからなぎさの教室をこっそり覗いていました。
(うちの学校は、ベランダに境がなく全て繋がっているタイプでした。)
授業が始まる少し前になぎさが教室に。
それを見たクラスメイト達は一瞬時が止まったように固まりました。
しかし、すぐに百合香がなぎさに向かって
「あれぇ、なんか来たんだけどー(笑)」
みたいな感じでなぎさにふっかけました。
マジであの女をぶっ杀殳そう!
と、思いましたが、ここで出て行っては何の意味もないと、我慢。
必タヒに嫌なことに耐え、居心地の悪い場所にとどまり続けることは本当にキツいことなんだと心の中でずっと謝り続けました。
やがて授業が始まりました。
最初、見ているうちは特に何事もなかったのですが、開始十分後ぐらいから異変に気付きました。
なぎさが教科書を一ページも開かないのです。
ずっと机の上を凝視し、ほとんど動かない。
ノートも開きませんでした。
その時の担当の先生は国語の教師であり、同時になぎさの担任でもありました。
その先生は、文章を席順で読ませて行くシステムをとっており、なぎさの番に。
先生:「なぎささん、続きお願いします」
指名され、こちらには聞き取れない声で
たぶん、はぃ。と言って教科書を開きました。
窓から見えた教科書は、ページ丸々、黒のマジックで塗りつぶされていました。
なぎさ:「読めません、、、」
と言ったようで先生は、
先生:「ちゃんと教科書は持ってきましょうね」
とかわけのわからないことを言っていた。
見れば、教科書を持ってきていることぐらいわかる。
なのに、それを気にする様子もなく次の人へ。
本当に腹が立ちました。
グルになっていたほかの三人もなぎさのことを見て、笑っていました。
なぎさの泣きそうな表情をみていると胸が締め付けられて吐きそうでした。
授業の間じゅう、百合香達はなぎさに消しカスを投げたり、紙くずに暴言を書き、なぎさに回したりしていました。
乱入したい気持ちを必タヒに抑えて、最後まで授業を見ていました。
それを追って、俺はベランダからなぎさのところへ行きました。
なぎさは学校裏の小さな花壇のところへ座り込んでいました。
それを見つけて、俺は近づきました。
なぎさ:「あはは、やっぱりキツイね」
俺:「・・・」
その表情が痛々しすぎて何も言えませんでした。
なぎさ:「私って、そんなに嫌なことしたのかな?」
なぎさ:「私、なんでいじめられてるのかな?」
そう言って、ついに泣き出してしまいました。
なぎさの泣く姿を見たのは幼い頃ぶりのことで俺はどうしていいかわからず、突っ立っていました。
自分がいかに無力か。
なぎさ:「もう嫌だよ・・・」
自分がいかに恵まれているか。
なぎさ:「・・・もう・・・・・・タヒにたいよ」
だからもう、抱きしめることしかできませんでした。
思いっきり抱きしめて、震えているなぎさを止めようとすることしかできませんでした。
俺の腕の中で、小さく震えながら嗚咽を漏らす渚の姿を見て、本当に泣きたくなりました。
俺:「ごめんな。 辛かったよな」
俺:「嫌だったよな」
泣き続けるなぎさは、俺の背中を必タヒに掴んで胸に顔をうずめて泣いているのを必タヒに隠そうとしていました。
俺:「いままで、辛かったよな」
俺:「耐えてくれてありがとう。 もう大丈夫だから」
俺:「だから、泣かないで」
そっと頭に手を乗せました。
涙でいっぱい濡れているなぎさの顔は今でもはっきりと覚えています。
なぎさ:「・・・っ!」
すぐに顔が歪み、また泣きそうになりました。
だから、思いっきり引き寄せてキスしました。
唇は涙で濡れていて、少ししょっぱかったです。
なぎさもビックリしたようで、背中に回していた手がビクッと硬直しました。
なぎさの唇から自分の唇を離した瞬間。
「いい雰囲気のところすんませーん」
変熊:「いやぁ、いいもの見せてもらいました」
のちに聞いた話だと、俺のいきなりのキスにビックリしたのではなく
上を向いたら背後にいた変熊にビックリしたのだそう。なぎさ談。
変熊UZEEEEEEEEEEE!!
変熊:「俺さん、いちゃつくのは後でいくらでもやってください」
俺:「・・・」
変熊:「そんな不機嫌な顔せんで、さっさと終わらしてしまいましょうよー」
俺:「そうですねっ!」
なぎさの頭を軽く撫でてから立ち上がる。
変熊:「こっちの準備はできました」
俺:「は? こっち?」
変熊:「そうです。 理由もなくなぎさちゃんを動物園の檻の中につっこますわけないですやん」
なにをしていたのか俺はまったく知りませんでした。
変熊:「まぁ、いじめがどれだけいけないことがわからせてやりますよ」
ただ純粋に、恐ろしい子だった。
変熊:「まぁ、とりあえずは校長から行きましょうか」
俺:「えらい軽々しくいいますね」
変熊:「まぁ、校長はたぶん知ってると思いますけどね」
スタスタと歩いていく変熊についていく。
ちなみになぎさは保健室に送り届けてきた。
俺:「俺のファーストキスを・・・」
変熊:「男のファーストキスなんてゴミの価値にもなりませんよー」
俺:「お前、それ俺に対するいじめだからな?」
変熊:「なに言ってすか! いじめじゃなく罵倒です」
俺:「よし喧嘩だ」
そんなくだらんやりとりをやってる間に校長室到着・・・
変熊:「失礼しまーす」
変熊:「どもです!」
校長:「私に何か用事ですか?」
変熊:「簡単に申しますと、○組のいじめの事です」
この瞬間、校長の顔がハッとした。
変熊:「ご存知ですよね?」
ここで、校長ら身を乗り出してきた。
校長:「いじめがあるとは聞いていました。しかし、担任が無いと言い張るのでどうにか動こうとは考えていたのですが」
変熊:「本来ならもう少し早く動いていただきたかったですね」
この変熊、ずいぶんと上からである。
変熊はバックからノートパソコンを取り出すとその場で立ち上げ、画面を校長の方へ。
変熊:「○組の授業風景です。 もちろんなぎささんには出席してもらいました」
そこにはさっきの教室での出来事が写っていた。
画面的に教室の左後ろの上から撮ったものだった。
俺:「まて、いつ仕掛けた?」
変熊:「まぁちょろっと入ってちょろっと仕掛けました」
俺:「まったく説明になってないんだが?」
変熊:「そんなことはどうでもよろし!」
その間も校長は画面を食い入るように見つめていた。
ただひたすらに、真剣な表情で。
重要な場所をピックアップした動画を見せ変熊はノートパソコンを閉じた。
変熊:「以上が○組のいじめの現状です」
校長:「・・・」
変熊:「こちらからどうこう言うつもりはありません。あとは校長ご自身にお任せします」
俺は黙ってそれに続く。
変熊:「俺さん、思った以上になにもしませんね」
俺:「お前の考えてることを全て話せっ! お前の行動予測とか普通できねぇんだよ!」
変熊:「まだ俺さんの出番じゃないですからね。モブキャラでも仕方ないですね」
俺:「いちいち俺を蔑むのやめてくんない?!」
変熊:「さて、次行きますよー」
続いて向かったのは、康子先生のところ。
まぁ、この人にはちょっとしたお願いがあったので。
同じように動画を見せてから、軽く現状報告。
変熊:「ってな感じなんでお任せしますね」
康子:「・・・ごめんね」
俺と変熊は二人で黙って康子先生を見た。
とても悲しそうな顔をしていた。
康子:「こういうのは私たち教師が動かないといけないのに」
俺:「動いてもらいますよ?」
康子:「そうね。今は解決することだけを考えるわ!」
そう言って、ももをパンっと叩いてこっちを見据えてくる。
康子:「ええ、任せなさい!」
それだけ伝え終わると職員室をでた。
変熊:「さて、作戦その二も終わりましたし、最後の方の大詰めは明日にしますか!」
俺:「そうね」
もう授業が始まる時間だったのでそのままの足で変熊は自身の教室に帰って行った。
俺はなぎさが心配だったので保健室へ。
保健室へ行くと先生が「なぎささん?」と聞いてきたので頷くとカーテンで仕切られたベッドを指差した。
「泣きながら寝ちゃったわ」と言って優しく微笑んでいた。
カーテンを開けて中に入るとなぎさは枕をぎゅっと握ってまだ涙の残る目元で、寝ていた。
時々フルフルと震えていたけど寒いのか、怖かったのかわからなかった。
なんだかとても愛おしくなってなぎさの頭をそっと撫で続けた。
撫で続けていると、不意にキュッとさっきまで枕を掴んでいた手で俺の手を握っていました。
手の位置を変えて、掴みやすいようにしてやると軽くにぎにぎしてきたので、こっちもにぎにぎし返してやりました。
少しするとスーッという寝息が聞こえてきた。
いっぱい辛いことに向かって行ったからずっと怖かったし、疲れたんだなぁと思いしばらくの間握り続けていました。
保健室の先生も見て無ぬふりをしてくれ
その時間はなぎさの隣で過ごしました。
こいつだけは、助けてやろうと心から思いました。