こういうスレ立ては初めてですが、書き溜めたの投下してくので
喪女のさみしい妄想話とでも思ってお付き合いいただけたら嬉しいです
ほんと、とにかく長いけどな!
私たちにとっては、二十代最後の冬。
久しぶりに、高校時代の美術部仲良しメンバーで飲み会をやることになった。
卒業後もちょくちょく集まってたんだけど
やっぱり、就職や結婚で、男性陣とは段々と疎遠になっててさ。
でも女子会wはしょっちゅうやってたので、ある日のノリで
久しぶりに男どもも呼んで、ちょっと早めの忘年会やろう!と。
そしてその日の連絡で、Aちゃんは私に、ほぼ消えかけてた人の記憶を蘇らせた。
「えっ!まさかの顧問しまピー登場!?」
「違うよw
ほらー、いたじゃん?美術部の隠れキャラと呼ばれてた男子が」
「んん?…………………あー、M君?」
「うん。O君から誘ってもいいか聞かれてさ。
断る理由も特になかったし…いいよね?」
「別にいいよ。私、あの人ちょっと苦手だったけどねw」
「そうねー、私もそんなに得意じゃなかったかなー。
たぶんM君としても、O君が誘ったから来るんだろうし」
「あ~。飲み会とか、絶対参加しなそうなイメージだよねえ」
「まあお互いもう大人なんだし、そこらへんは上手くやろう」
「もちろん!楽しみにしてるよー」
彼は、顧問しまピーと同じバンドのファンってことで仲良くしてて
放課後の美術準備室で、いっつもしまピーのCD聞きながら本を読んでいた。
その彼にデッサンモデルを頼んで、準備室から引っ張り出したのがO君。
どうもM君の本を読む姿がO君の感覚にツボったっぽい。
M君、なかなかのイケメンだったんだ。
美術室に出てきたM君は、そのうちO君以外の男子とも打ち解けて
モデル契約が終わってからも、なんとなーく美術室に顔を出していた。
でも私は、どこか陰気でトゲトゲしさのある彼が、どーにも苦手だった。
その後もあまり接触なく卒業したので、私にとっては
M君=準備室で仏頂面してる怖くて邪魔な男子
それで全てだったんだ。
あ、人来てくれた!
ありがとう、読みづらくないかな?
改行とか、大丈夫なのかな?
読みづらいかな?
どうもありがとう!
なにぶん不慣れで、ちょっとモタついてます…
お店に着くのが遅れてしまった私に、Aちゃんからイマドコ電話が入った。
「ごめん、もうちょっとで着く!」
「うん、気を付けておいで。玉山鉄二もいるよ」
「……はい?」
店に着いて案内された個室のドアを開けると、なるほど、確かにいた。
メガネをかけた玉山鉄二が、そこに。
まーご想像どおり、それがM君の成れの果てだった。
Aちゃんに押されてM君の隣に追いやられる。
この日集まったメンバー中、結婚のケの字すらないのは、私とM君だけだった。
「え、う、あ…どーもお久しぶり……玉山クン」
「お久しぶりです。
まだ嫁入り前だから、名前変わってないはずなんですけどねw」
苦笑いしながら、私のためにちょっと体をずらすM君。
「Aちゃんなに言ってんだろ?と思ったけど、ほんと似てるね。
どーして高校生のとき気づかなかったかなあ?」
「あー。あのころはまだデビューしてなかったもんで」
「ご本人様かww」
「はいはい、人の顔見下ろしてないでさっさと座る」
「あ、ごめんごめん」
M君の隣ということでちょっと身構えたけど、
冗談ぽくウザそうにされただけで、高校時代の陰気なトゲトゲしさはなかった。
大人になって、ずいぶんと丸くなったんだなあ。
つーかこれ、あれだ。
きっとよそでも玉山玉山言われまくってんだろうな…。
前はよくこういう飲み会やってたんだよ?来ればよかったのに」
「俺は部員じゃなかったから、やっぱり気が引けてさ」
M君はこの二年間、資格取得のために勉強漬けの毎日だったとのこと。
そして試験終了して、それまでの断酒生活にサヨナラしようと
O君と飲む約束をしていたら、この飲み会の話がきた、と。
どうやらそんな流れで、偶然の参加だったようだ。
「なんかごめんね、部外者がいて」
「んん?だって男子とはまだ付き合いあるんでしょ?
だったら部外者ってわけじゃないじゃないw」
そんな遠慮しなくても、その顔ならわりとどこもフリーパスなのでは…?
と思ったけども、話してるうちに段々と気づいた。
彼は、そういう馴れ馴れしさや、調子づいたところがない人だった。
久しぶりのM君はトゲトゲしさが抜けたどころか
控えめな雰囲気の、感じのいいイケメンに進化していた。
きっと高校時代のぶっきらぼうな陰気さは
大人としての落ち着きへ変化したんだろうな、と思った。
ホント言うと、高校のころはちょっと怖かったんだー」
「あー…。ごめん、それはお年頃ってやつですよ。
あのころは俺も女子が怖かったんだ」
「へええ、そんな奥手だったんだ?
まー喪女の私が言えたこっちゃないけどw」
「うん、いまも似たようなもんだよ。どうぞお手柔らかにw」
はい、それは絶対ウソだね。
私は、彼氏いない歴=年齢の、正真正銘の喪女。
「君は友達」「妹みたいな存在」なんて、フられ続けて十数年。
だけど、男性ばかりな職場なので、ある意味で男の人には慣れている。
お付き合い経験ゼロなのに、見る目ばっかり肥えちゃっていた。
なのでこの日も、M君と話しながら冷静に観察もしてて
好青年に大変身してる彼に驚きつつも
「こいつ女慣れしてるなー。この顔なら当たり前かー」
なんて、生意気なことを思ってもいたんだ。
しかも私の男性の好みは、ゴツゴツした顔のいかついタイプ。
イケメンには全然興味なくて、M君みたいな人といても全然ときめかない。
このお話はフィクションです
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そんな感じで読んでもらえると、実は助かるw
「あのー、そろそろ玉山呼ばわりはやめてもらえませんかねえ」
「いーじゃん、褒めてるんだし。
それともあれかい?
君、イケメンであることにコンプレックスがあるとか?」
「なんで飲んでない方が絡んでくるんだよw
いやもう単純に、俺の名前は玉山じゃないからね?
それにもしも喪子だって………って、あれ?
…………えーっと。
……俺、高校のとき、喪子って呼んでましたっけ…?」
「いんや、苗字にさん付けでした」
やっとそこに気づいたか。
たぶん呼び方忘れちゃうくらい、印象薄かったんだろうなー。
そんで他が喪子喪子呼んでるから、つられちゃったんだろう。
「いまさらどーでもいいわいw好きなように呼んでよ」
「えーと、喪田さん…喪子さん…喪子ちゃん…………喪子」
「はいよ」
「ごめんね、やっぱり俺もみんなと同じように呼んでいいですか?」
「だから気にしないでいいってばww」
この時、私は確信した。
こいつ、やっぱりいい奴だ。
彼はおしゃべりではないけど、口を開くと三枚目になるタイプだった。
話を聞いてて面白いし、こっちの話もしっかり聞いてくれる。
それに私たちには、いくつか共通点があったんだ。
まず、聞いてるジャンルは違ったけど、音楽が好きということ。
それと、職業がビミョーにかぶっていたこと。
これには彼のほうが食いついてきた。
彼には私の職種方面のツテがなかったらしく
お願いされたので名刺を交換すると、周りから野次が飛んだ。
「ちょっとそこ~…商談かよ…」
「ちゃんとプライベートのも交換しなよー?」
「せっかくだから、クリスマスは二人で過ごせば!?」
「「クリスマスは夜まで仕事だよ!」」
誰かの言葉に、私とM君は同時に返した。
もう慣れっことは言え、なんとなく仲間意識が芽生えてしまう。
「なにクリスマスに仕事してんだよw」
「そっちこそwお互い様でしょーがw」
「クリスマスがヒマだと、正月がこないもんなあ」
「そーそー。クリスマスだけ忙しいわけじゃないけどね」
「それじゃあ、クリスマスに仕事終わって虚しくなったら、メールでもくださいな」
M君はさりげなく、自分の名刺の裏にメアドを書き込んだ。
うーん、この流れ…
やっぱこいつ、慣れてんなー。
「でもこのアドレスにメールすると、
ちょっとこれ誰よ!なんて修羅場になるんでしょ?」
「それはありません」
即答でした。
と言うよりも、仕事のバタバタでそれどころじゃなかったんだ。
だけどクリスマスの夜、仕事帰りに立ち寄ったコンビニで
クリスマス用のショートケーキが一つ売れ残ってるのを見たら、ふと
あ、M君にメールしてみようかな?
という気分になった。
ヒマだったらメールくれって言ってたもんね。
………だけど、相手はイケメンですぜ?
聖なる夜に喪女がイケメンにメールするとか
勘違いも甚だしいんじゃありませんかい?
もう一人のモジョモジョしい私が語りかけてきたけど
「それはありません」という即答を思い出して、思いきってメールしてみることに。
同じ売れ残りとして、どうしたらいいかな?」
返信はわりと早かった。
「返しに困るメールを寄こすな!
是非ご一緒にと言いたいところですが、あいにくと風邪をひいてしまいました。
せっかくメールしてくれたのに申し訳ない。
ケーキは買ってあげるとよいでしょう。
メリークリスマス」
なんかずいぶんと、やんわ~り断られたなあ。
別に一緒に食べたいなんては思ってなかったのに
断られると、なんだかやっぱり凹むなw
…ひょっとして、女の子と一緒だったとしたら悪かったなあ。
「お邪魔しちゃったならゴメン!
ほんとに風邪ならお大事に、あったかくして寝ろよ~。
メリークリスマス!」
送信。
さーてケーキ買わずに帰るかあ、と思ってたら、携帯が鳴った。
M君から、メールではなく電話がかかってきた。
開口一番、彼はものすごい掠れ声でそう言った。
「うわー…。それ、しゃべらない方がよくない?」
「だったら、しゃべらすようなメールをするな」
「あー、えーと、そうか…ごめんなさい」
「いえいえ、こちらこそ突然電話してすいません。
もう三日も寝込んでて、どうにもヒマなもんで、つい…」
「え、三日も?」
この繁忙期に!?
とは言わないでおく、私の優しさ。
「」
一瞬、言葉が止まった。
「食べてるよ」
「なにを?」
「適当に、あるものを」
食べてねーな、こいつ。
「あのー、もしなにか食べたいものあったら、持っていこうか?
せっかくだし、この際、頼ってくれてもいいよ?」
「あー………それじゃあ、甘くて柔らかくて喉にやさしい、ケのつく食べ物を…」
売れ残りのケーキを速攻で買う。
だけど、風邪ひいてるときにケーキはないよなあ。
レトルトのスープやおかゆも買って、メールで送られてきたM君のアパートへ向かった。
扁桃腺をやられて、高熱を解熱剤で抑えてるとのことだった。
「風邪ひいててもイケメンなんだねー」
と言うと
「いま病人なんで、上手いこと返せない」
と、鬱陶しそうにシッシッと手を振られた。
やっぱり、言われ慣れてんなー。
「普通普通w絶好調に修羅場だよww」
「そっか…。
じつは昨日、年内仕事だけでもって思ったんだけど…
上司に追い返されちゃってさ」
「はあ!?ひょっとして、その顔色で出社したの!?」
「うん、どっちにしろいい迷惑だよな…でも焦っちゃってさ」
しゅんとしてしまうM君。
ああ、休んでること、こんなに気にしてたんだ…。
まあ追い返されたってことは、気にせず休めってことだよ。
いい上司さんじゃないかw
ところで、はいこれ。ケーキと、その他いろいろ」
「いろいろ?」
「うん、あっためればいいだけのやつ。
いらなかったら保存食にでもしてね」
「いらなくない…すごくありがたい」
「じゃ、早くよくなれよ!」
「え、ちょっと待った。あの、お代」
見れば、彼の手にはお財布が。
サンタさんからの生活感あふれるプレゼントじゃw」
「え、でもそれじゃあ……えーと、風邪うつるの覚悟で上がっていく?」
「ぜったいにヤダw早く寝ろw」
「だよね。えーと、その、あれだ…
こんど酒……は、そっか、飲まないのか。
じゃあ、年明けに、食事でも、ご一緒に」
なんだかやたらしどろもどろだった。
あちゃー、病人に気をつかわせてしまった。
「うん、楽しみにしてるわw
でもまずは、しっかり休んで風邪治せよ!」
このとき、食事のことは社交辞令としか思ってなくて
なんか人助けしちゃったなあ!くらいの感覚だったのでした。
普通に仕事始めを迎えて、やっとお正月気分も抜けてきたころに
突然メールでM君から食事のお誘いがきたときは
「ずいぶんと律儀だな~」
と思ってしまった。
それとも、借りは返さないと気が済まないのかな?
どっちにしろ、彼とまたおしゃべりできるのは、私としては楽しみだった。
なので喜んでお受けしよう、とは思ってたんだけど……
一つだけ、気になることがあったんだ。
失礼だけども、ボロだった。
それも、かなりのボロ。
着くなり「ほんとにここ!?家賃いくら!?」と思ったくらいボロ。
この業界、ものすごくお給料がいいわけでもない。
もしかしてM君、あまりお金に余裕がないんじゃないか?
だってあのとき、すごくしどろもどろになってたし…
無理して食事に誘ってくれてるんだとしたら、どうしよう?
だけどせっかく誘ってくれてるのに、そんなんで断るのもないよねえ…。
と、まあ結局は、ご馳走になったんだけどさ。
今こうして振り返ってみると、私はこのときから、
なにかボンヤリと感じとってはいたんだなあ、と思う。
そしてそのボンヤリは、やがて段々と形になっていくことになる。
まずはじめに、お礼が遅くなったことを謝られた。
「参ったよ、年内で治ると思ってたのに。もう歳なのかなあ」
「栄養失調なんじゃないのー?」
冗談めかして言ったけど、M君、わりとやつれてた。
「俺、体調不良が顔に出るんだよね。
でもあの差し入れは本当に助かった、実は食料が底をついてたので」
「ほかに誰か、助けてくれる人いなかったの?」
「うん、誰もいなかったねえ…」
「えー?イケメンのくせにー?」
「イケメン全員にそういう人徳が備わってると思うなよな」
「でもほら、そんな時に一番頼りになる人がいるじゃない」
「ん?誰?」
「家族だよ。電話すればよかったのに」
「あー。いまちょっと疎遠になっててね」
「あ、ごめん、そうなんだ」
話してるうちに、昔CMで聞いてメロディーしか覚えていなかった曲を
なんとM君がCD持っていることが判明して、私、大はしゃぎ。
「もうずっと気になってたんだよー!
お願いです、CDを貸してください神様!!」
「…これでイヤだと言ったら鬼だよねw」
「うおおお、帰りにアパートまで取りに行ってもいい!?」
「えーと……後日じゃだめかな?」
「はああああン?なんでよ???」
「借りる分際で態度でけえなw
ずいぶんと聞いてないから、きっとすぐには出てこないよ。
一体どこに埋もれているやら…」
「そんなの、一緒に発掘するよ!」
「いや、勘弁してよ」
私、はしゃぎすぎて今かなり図々しいこと言った。
そうだよな…。
私はM君の彼女でもなければ、友達ですらない。
ただちょっと差し入れをして、その借りをM君はこうして返してくれた。
CDを借りたら、返すときにまた私と会うことになる。
ましてや部屋に押しかけて、一緒に探すとか。
もう彼は、私に付き合う義理はないんだ。
ちょっと話が合うくらいで、図に乗っちゃいけない。
「………ごめん!なんか私、馴れ馴れしいねw
CDは、発掘終了後に気が向いたらでいいやw」
「え?」
M君はきょとんとしてから
私の態度急変の理由をすぐに察したようだった。
一緒に発掘してくれる、その気持ちはありがたいんだけどね…」
「……?なに?」
「………部屋が、とても汚いのですよ」
何故かゲンドウポーズで深刻な表情をするM君。
「そう?こないだお邪魔したときは、綺麗だったじゃない」
「あれは人に見せるエリアだから…その奥の生活エリアが、ちょっと」
「エリアわけされてるんだwでも私も人のこと言えないからなー」
「いや…いま喪子が想像した汚さとはレベルが違う。
その程度の覚悟で入ったら、きっと後悔するよ」
「なんだそれ、どんなレベルだw」
「えーと、TSUTAYAの倉庫にホームレスが住み着いたレベル?」
「うわあ、なんかすごい具体的に映像が浮かぶwww」
「ゲンドウポーズ」ツボったw