自転車に乗った彼が、私を追い抜いて行ったのです
走り去っていく彼の後ろ姿しか見えなかったですが、ふいに香った懐かしい彼の匂いや、
初めて見た高校の制服姿に、胸がひどく痛みました
私を追い越すとき、彼も後ろ姿の私に気付いてくれただろうか
気付きながらも、するりと追い抜いて行ったのだろうか
説明しようのない感情が私を襲いました
寂しさ、もどかしさ、切なさ、自分への嫌悪感
その場に倒れ込みたい衝動を必タヒに抑えて、歩みを進めました
ついに、彼と鉢合わせました
ロビーでオートロックを解除している時、後ろから現れたのが彼でした
心臓が止まるかと思うほどの衝撃でした
片方の口角を上げて、彼は複雑そうに私を見ました
「ひさしぶり」
本当に久しぶりな彼の声に、胸がドキドキと高鳴り、チクチクと痛みました
「ひさしぶりだね」かすれた声しかでませんでした
せめてもっと可愛い声を出せたら良かった
ただそれだけの事があまりにも懐かしく、あまりにも嬉しく思いました
昔はこれが当たり前だったんだよな、と胸が締め付けられる思いでした
当たり障りのない近況報告をし合い、二人でエレベーターに乗り込みました
私は馬鹿みたいに一人でずっとドキドキしていました
「ゆうちゃん、俺彼女できたよ」
彼が私から目を逸らし、控え目な笑みを浮かべてそう言いました
長くなってもいいから丁寧にお願いしやす(((o(*゚▽゚*)o)))
喉元が一気に締めつけられて、息が止まるかと思いました
そんな私が上手に笑顔を作れるわけもなく
ただ「そうなんだ」と発するだけで精一杯でした
そんな時にエレベーターが私の階に到着
逃げ出したい衝動から、私はそそくさと出て行こうとしました
「なんでおめでとうとか言ってくんないの?」
彼が[開く]のボタンを押しながら言いました
「何そのリアクション」「ゆうちゃんはホッとするとこじゃん」「なんでお祝いしてくんないの?」
堰を切ったように、彼は吐露し続けました
けれど怖いとかいう感情はなくて、ただただショックで呆然としていました
しばらくの沈黙の後、
「ごめん、行って」
彼が静かな声で私を促しました
言われたままに、ノロノロとエレベーターから降りることしかできない私
エレベーターが閉まった時、ガラスの向こうの彼と目が合いました
犬みたいだと思いました
こんな時に相応しくない感想かもしれないけど
昔、哀愁を背負っていた彼をそう例えていた時のように、犬みたいだと思いました
エレベーターが事務的に上昇していったけれど、私の胸は少し綻んでしまいました
鼻の奥はツンとしていたけれど、
唇を噛みしめなければ泣いてしまっていたけれど、
彼の犬みたいな瞳を思い出して、少し微笑ましい気持ちになったのです
祝福しなければ、と思いました
でないと、彼が自分の幸せを、自分の新しい恋を、
手放しで喜べないだろうと思ったからです
ずっと好きだった私に「幸せになってね」と言われれば、
彼は私から解放されるのだろう
彼がさっき言っていた「なんでおめでとうとか言ってくんないの?」は、
きっとそういう意味を含んでいるのだろう
おめでとう!幸せになってね!
寂しくて、つい言いそびれちゃったけど
本当にけんごの幸せを祈ってるよ」
私は彼へこんなメールを送りました
いわゆる強がりだけど、私の方がお姉さんなんだから、これくらいどうって事ない
私が彼氏できたって言ったら、けんごは「良かったね」と言ってくれた
私に怒りをぶつけることなく、黙って話を聞いてくれた
いつも私のために強がってくれた、折れてくれた、譲ってくれた、我慢してくれた
今度は私の番だと思いました
けんごのことはとても好きだけど、笑って送り出してあげなければ
「寂しかったってどういう事?」
ただその一文だけでした
この返事は予想だにしてなかったので、少し戸惑いました
でも最初で最後に、少しだけ素直になってみました
「けんごに彼女ができちゃって寂しかった
自分勝手でごめんね」
こんなメールを送った私は、きっと女の敵ですね
私が彼女だったらイラッとしますもん
でも最後だから送ってしまったのです
「なにそれ(笑)
ゆうちゃんにも彼氏いるじゃん」
彼からのそのメールで、
確かに元彼と別れた事を伝えていなかったのを思い出しました
「別れたよ」
そう送った返事は、
「でも最近ゆうちゃんとあの人が一緒にいるとこ見たよ」でした
体だけの関係の人といるところを見られたわけだから
一番見られたくない相手に見られていたなんて
自分の浅はかさを恥じました
どこまで説明すればいいか解らず、散々悩みました
体だけの関係扱いされてるだなんて、言えるわけなかった
それに私ばっかりが被害者なわけじゃない
寂しいときに彼を利用したのは私だ
かと言って、ただの友達だと嘘をつくのも気が引けて
「寂しいときに一緒にいてもらったんだ」
そう送りました
「今から会える?」
彼からの唐突な誘いに戸惑ったけれど、
何か吹っ切れたような気もしていたので、うんと答えました
そしてロビーで待ち合わせ
切なさもあったけれど、久しぶりのシチュエーションを少し喜んでいました
エレベーターが開く音がして、さっき振りのけんごがそこには居ました
どんな顔をすればいいか解らなかったけど、けんごの顔がさっきより幾分穏やかで、
私の頬も少し緩みました
「少し散歩しようか」彼の提案で、久しぶりに図書館までの道のりを歩きました
急に会おうと言い出した彼には、きっと何か話したいことがあるんだと思いました
そしてそれはきっと彼女の事だろうと予想もついていました
笑ってお祝いしなくちゃ、と思いました
さっきできなかったのだから、次こそは、と
彼が唐突にそう言いました
「あの人って、元彼?」「そう」
まさかこんな話だとは思いもしてなかったので、かなり驚きました
しかも彼のその言い方に、私と元彼の不誠実な関係を
読まれてるんじゃないかという不安も生まれました
「なんで?」
ずばり言い当てられるのかもしれないと思いつつも、そう尋ねました
「ゆうちゃんが俺に彼女できて寂しいって思ったのは
恋愛の意味でじゃないかもしれないけど、でも、
ゆうちゃんが寂しいって思うなら、俺はもう彼女は作らない」
「今の彼女には悪いけど、俺、ゆうちゃんの気持ちに全部応えたいって思った」
「きもい?俺きもいよなー」
彼はそう言いながらも、満面の笑みを見せてくれました
私はというと、胸がいっぱいで、
みるみる涙が目に溜まっていってるのが解りました
私は本当に自分勝手な人間なので、嬉しかったのです
こんなの、彼女さんに悪い、けんごにも悪い、解っていても本当に嬉しかった
同時に、彼に抱きしめられたあの日から続いた地獄のような日々が思い出されて
まさかこんな日が来るなんてって夢みたいに思えて
「けんご、私けんごのこと好きになっちゃってた」
思わず、号泣しながらそう告げてしまったのです
元彼寄りの意見でした
「好きって恋愛のやつ!?」「うん」「まじか!!!」
よっしゃーーーーーーーーーと、
嘘みたいに、漫画みたいに、両方の拳を突き上げる16歳が
愛しくて愛しくて堪らなかった
なんだかホロホロ涙が止まらなくて、そんな私を見て彼は
「え?あれ?どうしたの?でも俺嬉しいし、あれ?」とアタフタし出すし、
それはとてもカオスな状況でしたw
「いつから?いつから好きになった?」
見えないけど尻尾をぶんぶん振りながら彼は聞きました
「抱きしめられた日から」と答えると、
「そっかーーーー!!!…あれ?でも割と最近だね」と一喜一憂する彼
私の気持ちもパンッパンッになってて、もうパンク寸前で、
一度好きだと伝えると何度も伝えたくなって
「かわいい」「すき」「かわいい」と何度も繰り返しました
顔を真っ赤にしてキャッキャッと喜ぶ彼を見ていて、何だか本当に嬉しかったです
。・゜・(ノД`)・゜・。
あの春振りに抱き締められました
「ゆうちゃん、長かったよ」
彼が私の耳元でそう呟き、その声が少し震えていて、
小学生だった彼を思い出しました
なんだかあの眼鏡の少年が堪らなく愛しく思えて、ふと上を見上げると
半ベソかいてる愛しい高校生がいて、「かがめ!」と言ってチューしたったです
唇を離して「三年振りだ」と冷やかすように笑うと、バツが悪そうに彼はハニカんでいました
二人で浮き足立って、手を繋いで帰りました
「俺達、彼氏彼女?」「いや、飼い主とペット」「」「けんごは柴犬」
幸せってこういう事か、と痛感した帰り道でした
終わり終わり!!!解散!!!
ううううううううううそですすみません舐めた口聞きました
とろとろしててすみません
いつも沢山のレスありがとうございます
返せなくてごめんなさい
もしかしたら夜中更新します
この調子じゃ明日には終わります
でもいつも終わる終わる詐欺してるからなw
多分ここから私、嫌われ期に入ると思います・・・
苛々させるだろうけどごめんね
好きな人に会いたくなったじゃないか
どうしてくれるんだ
本当に申し訳ないことをした、と落ち込んでいるけんごを見て、
私も申し訳なくて苦しかったです
けれどけんごが「でも俺嬉しい気持ちの方が強いから」
そう言って、手を握ってくれました
「俺がんばるからね」
こうして私達のお付き合いは始まりました
私は近所のコンビニで週3,4程バイトを始めました
終業時刻に彼が迎えにきてくれるのが習慣になり、
遠回りを沢山して帰るのが私達のデートでした
神聖な職場だから!と、肌寒い季節がやってきても彼はコンビニの中で待つことなく、
少し離れたガードレールに座っていつも私を待っていました
私が出てきたら嬉しそうに立ち上がってくれる姿が可愛かった
近所なのにいつも少しお洒落をしてる姿が可愛かった
週末バイト休みだよと伝えると、「遊べる?」と喜んでくれるのが可愛かった
私はまだ19の小娘でした
私の周りだけかもしれませんが、このくらいの年頃の女の子は
「年上の男性」「社会人」と付き合うのがステータスになっていたように思います
特に私達は女子校上がりの女子大生だった為、
周りに同級生の男子がおらず、どんどん夢見がちになっていました
「今の彼氏は社会人」「年上の彼氏はなんでも買ってくれる」「やっぱり付き合うなら年上だよね」
繰り広げられる友人達のガールズトークに、私は笑顔で賛同するのです
「年上の彼氏が欲しい」と言う友人には「欲しいね」と返し、
「ゆう彼氏いないの?」と言う友人には「いないよ」と返しました
今となってはなんてくだらない思想なのだろうと思えるけれど、
当時私の生きる世界で「高校一年生と付き合っている」なんて、とても言えなかった
昔から彼の年齢を気にし続けてきた私には尚更でした
私はいつも後ろめたい気持ちでいっぱいでした
彼の学校行事に誘われても、私は首を縦に振りませんでした
けれどこんな私に罰が当たりました
お互い先に別件の用事があったから、街中で待ち合わすことになりました
私が先に到着し、「ゆうちゃん」と声をかけられ振り返ると、
そこには制服姿の彼がいました
少し戸惑ってしまいました
けれど溢れんばかりの笑顔を向ける彼に、この戸惑いを悟られるわけにはいきませんでした
「昨日までに提出しなきゃだったプリントを出しに行ってたんだ」
確か彼はそんな風に答えたと思います
「じゃぁ何しようか」と目を輝かせる制服姿の男の子
そうだ、彼には何の罪もないのに、
こんなに屈託無い笑顔を向けてくれているのに、私はなんて事を気にしているんだ
そう自分に言い聞かせ、嬉しそうに前を歩く彼について行きました
美味しそうにご飯を食べたり、何をするにも楽しそうだったり、
そんな彼に癒されながらも私は、人の目を気にしていました
自意識過剰もいいところです
世間から見たら、制服姿の男の子と
どこからどう見ても化粧覚えたての女の子が一緒にいることなんて、
何の違和感もないのに
本当に馬鹿げています
けれど私も二人が一緒に写ったプリクラが欲しかったから「いいね」と快諾しました
初めて二人で撮るプリクラに私達はハシャいでいました
カメラの前で抱き締められたり、落書きに「大好き」と書かれたり、
素直にどれもこれもが嬉しかった
二人で浮かれながらシートが出てくるのを待っていたとき、
ふと目を向けた先の光景に私は絶句しました
大学の同級生二人が、笑顔でこちらを見ていました
「友達?」彼が私に問います
「初めましてー、ゆうと同じ講義取ってます○○です」
同級生はそう言いながら、彼のことを値踏みするような目で見ます
「え、もしかして、ゆうの彼氏?」同級生の一人が声を弾ませ尋ねます
「あ、えーっと、はい」彼が嬉しそうに答えます
「えーーー!!!」同級生二人が騒ぎます
私一人、下手くそな笑顔を貼り付けて、
早くこの場を切り抜けなきゃと、ただただ焦っていました
けんごが傷つくのか…
勿論そんな私の願いなんか知る由もなく、
彼女達は楽しそうに
「もー!ゆうずっと彼氏いないって言ってたじゃーん」と言いました
私は彼の顔を見れませんでした
同級生達はまだ続けます
「え、制服だよねー?○○高だー!」
「ねぇねぇ何年生?」
聞かれてしまった、と思いました
それはこの瞬間一番触れられたくないワードだったのです
「高三です」
彼がそう答えたとき、
心臓を強く強く殴られたようでした
「じゃぁ一個しか変わらないねー」
そう騒ぐ同級生達の声が遥か遠くに聞こえました
嘘をつかせてしまいました
何も悪くない彼に、嘘を
カワイソス(>_<)
しかし複雑だな
ゆうちゃんの気持ちも痛い程解る…
同級生達は満足げに帰っていきました
私はけんごの顔を見ることができませんでした
知られてしまった、私がけんごの存在を隠していたことを知られてしまった
頭の中でグルグルと言い訳を考えていました
逆に彼氏がスーツ社会人だったらサクッと掃けるくせによーww
よく空気を読んだな
断言する!
お前は社会でも出世する
彼の声が優しくて、いたたまれなくなりました
謝らなきゃ、そう思い口を開いた瞬間、
彼は出口へスタスタと歩いていってしまいました
小走りで追い掛け、やっと彼の横に並べた時に「ごめんね」と声をかけました
彼はスタスタ歩きながら、ううんと首を振りました
口元に笑顔を浮かべて
そんな顔をさせてしまった自分が本当に情けなくて、
何度謝っても足りないと思いました
「でも」
彼が歩みを進めながら、前だけを見ながら、口を開きました
「本当に18なら良かった」
悔しそうに顔を歪める彼を見て、言葉を失いました
でも今更何か言っても、全部が嘘臭くなってしまう
言葉を探しながら、彼の歩幅について行きました
そんな私に気付いた彼は、私に歩調を合わせ、
「恥ずかしい思いさせてごめんね」
まるで自分が悪いみたいな顔で、私に謝りました
泣いてしまうんじゃないかと思いました
それくらい苦しそうな顔をしていました
でも私は何も言えませんでした
「先帰っていい?」彼は私を見ずにそう言い、
「気をつけて帰るんだよ」と付け加えました
そしてスタスタと歩いていきました
うらやましいぜ
>>336
なるほど
そう見えますよね
いつも続きが気になる終わり方するね…
彼を幸せにしてあげてぇぇぇおやすみー