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:名も無き被検体774号+2012/09/08(土) 11:02:06.35 ID:3e8lTqdb0「ビショビショにしてごめんなさい。飲み物粗末にしてごめんなさい。」とひたすら謝っていた。
大将が笑顔で「気にせんでええよ」と言ってた。
ベテランさんはクリステルや私たちにも謝ってきた。
私は結構飲んでたせいか、何故か号泣してた。
アントン以外の人が良い人すぎて涙が止まらなかった。
大将にアイスを貰って、皆がタクシーに乗せてくれてお家に帰った。
ベテランさんは素直に謝ってた。
謝ってるベテランさん見て、ちょっと心苦しくなった。
この日のアントンはいつも以上に不機嫌だったけど、営業さんが買ってきたケーキを食べたら機嫌良くなった。
人数分のケーキなのに、外出してた営業さんの分まで食べてた。
それから数日間アントンはちょくちょく問題を起こしたけど、皆普通に過ごしてた。
皆大人だと思った。
ベテランさんと凄く気が合うらしく、2人は仲が良かった。
よく私と友近さんも誘ってくれて、4人で飲みに行ってた。
ベテランさんとクリステルは「ほんと私たち不良主婦だねぇ」って言ってた。
何回に一度は社交辞令でアントンも誘ったけど、「彼氏と会うから」と言って来なかった。
しかも皆に聞こえるくらい大きい声で言ってた。
ブスでデブで忄生格悪いうえに難聴かと思った。
如いて言うなら、親が金持ちって事だけ。
この金持ちっていうのも嘘かと思ってたけど、社長曰くこれは本当らしい。
そんなアントンにある朝一番「飲みに行こう」と誘われた。
しかも二人きり。
朝から二人とはまた重いな
助けを求めようと周りを見るとベテランさんが口パクで「行って来い」って言った。
クリステルは何故か指でOKサインしてた。
友近さんはニヤニヤしながらPCの画面に向かってた。
基本、女忄生陣はお弁当持ちだったので休憩室で食べてたんだけど、金持ちアントンだけはいつも外食してた。
4人になった時、あのOKサインと「行って来い」の意味を聞いた。
すると、友近さんがとんでもない事を言い出した。
「アントンは営業に好きな人おんねんで」
全く意味が分からなかった。
3人からプロポーズをされてるはず。
100歩譲ってそれが嘘だとしても、今までの醜態を見せてて好きになるも何もないもんだ。バカかと思った。
しかも、なぜ私がアントンと2人で飲みに行かないといけないのか。
全く意味が分からなかった。
これといって芸能人に似てる人がいないので、「営業男」ってよびます。
営業男は32歳、独身。まぁシュッとした感じの人。
どうしてそれが分かったのか聞くと、皆が「見ればわかる」と言ってた。
大人だなぁって思った。
ベテランさんとクリステルは、アントンもきっと一人で寂しいはず。
自分達にはあまり話しかけてこないけど、晴美(私です)は気に入られるようだから、ちょっとでも歩み寄ってやろうじゃないかと、他人任せだけど大人な考えを言ってきた。
の事を好きなのかと思った
もしそうだったら、今頃生きてません。
どうしても営業男を生贄にするのかと聞くと、「片思いでもいい。好きな人が側で仕事をしてるだけで落ち着くかもしれない」という。
とりあえずアントンの相談を受けて、適当に立ち回れ。もちろん力は貸すからと。
友近さん1人張り切っていた。
人の恋愛感情を弄ぶのは禁止とも言われた。
でも私は友近さん命令で生贄となった。
アントンは本当に金だけはあるらしく、結構高そうな店に連れて行ってくれた。
まずはビールとワインで乾杯。
料理を注文しようとメニューを見てみると、本当にお高い。
ふとアントンを見ると、キモイくらい目を細めて煙草に火を付けてた。
結局、スルメの天ぷらはなかったから適当に頼んだ。
「晴美、あんたにちょっと相談があるねん」
キタ!と思ってアントンを見ると、遠い目をしていた。
クリステルがやると、絶対見惚れるくらいキレイな表情だと思った。
でも相手はアントン。
バカにしか見えない。
しかも口から煙草の煙が出て微妙に鼻の穴に吸い込まれてた。
心の中で「ザキ」って呟いた。
営業男が好きだ。
今までの男は飽きたので振った。
お前は営業男と仲が良いんだから、なんとかしろ。
って事だった。
たったこれだけの内容を2時間に渡って話された。
でも、私と営業男の話の中で一番盛り上がるネタは、アントンのガンガンドスドスだったり、アントンのクリステルいじめだったりする。
営業男も本当に可哀想だなぁって思った。
何の特徴もないけど良い人なのに。
早く帰りたかった私は「じゃ、協力しますよ」と言って話を終わらそうとしたけど、アントンは営業男の良い所を延々と話続けた。
「どうでしたか?帰ったら電話下さい」
どうでもいい情報だけど、友近さんはメールになると、標準語&敬語になる。
しょうがないので、電話して報告した。
友近さんは「あんたの今後にかかってるんやで。頑張ってや」って他人事だった。
とにかく大好きな皆のために頑張ろうと思った。
バーン!という音と共にドアが開いてご機嫌アントンが出社してきた。
私「昨日はありがとうございました。ご馳走様でした。」
ア「ええよええよ。」
(営業男出社)
ア「晴美は妹みたいに可愛いから、また飲みに行こうなぁ」
もちろん最後のは営業男に聞こえるくらいのデカイ声。
『出来る女』スキルに『年下に慕われる女』が加えられた。
アントンによばれた。
今日中に好きな人はいるか、どんなタイプが好きか聞いてくれという。
「好きな人はいるか」はまぁいいとして、
「どんなタイプが好きか」を聞いてどうするのかと思った。
今更どうあがいても、アントンはアントン。変われない。
でも昨日奢ってもらったので素直に「了解です」って返事した。
『角刈りで太った女の人が好み』って言ってあげたらよかったのに
知らぬが仏って言葉の意味がこれほど理解出来た瞬間はない。
営業男も外出し、アントンには帰りまでに聞いときますと報告した。
友近さんが、「よく食べる人がタイプって事にしろ」って言った。
アントンの良い所を金持ち以外で探したらそれだったらしい。
するとベテランさんとクリステルが「でも、アントン騙してちょっと可哀想」とか言い出した。
ベテランさんはまだしも、クリステルはアントンにすごく意地悪されてたのにどこまでも優しい人だ。
アントンから晴美に勝手に相談してきただけだし、どちらにせよアントンは振られる。
その期間を延ばしてるだけという事だった。
私も賛成した。
私が頑張ればアントンも幸せ、皆幸せ、万歳だという事。
とりあえず、続けようということになった。
私は見積もりを作るよう頼まれた。ちょっと溶けたミルキーを貰った。
ミルキーを食べようとすると、アントンに呼ばれた。
アントン第一声「ミルキーちょうだい」。
もちろん渡した。
これ以上アントンに呼ばれたくなかったので、AKO会議で決まった事を報告した。
「営業男は良く食べる人がタイプらしいです」
アントンがニンマリした。キモかった。
もちろんどっかで買ってきたお弁当やパン。
ベテランさんが「ほんとよく食べるなぁ」というと
「うん。私食べるの好きやねん」ってキモイ笑顔にデカイ声で答えてた。
クリステルをあれだけいじめといて、よく相談出来るなと思った。
しかも、アントンは私にとんでもないミッションを言ってきた。
その日のアントンの食べた量を営業男にそれとなく報告しろという。
ましてや、本当は何の関わりもない営業男に聞かせるのは酷すぎる。
しょうがないので、適当に「了解しました」と返事した。
すると、何故か営業男から突然
「最近、アントンと一緒に食ってんの?アイツ何食べてんの?」
と聞いてきた。
もちろん本当に大食いだったので、営業男も驚いてた。
「マジで?アイツ何になるつもりやねんwww食いすぎやろwww」
こんな反応アントンに報告出来ないので、唯一のAKOメンバー友近さんの指示を仰ぐことにした。
これまでの経緯を話すと、「ちょっと嬉しそうな顔してたって言ってたら?」と危険な事をいう。
それでアントンが本気になったらどうするのかと聞くと、
「アントンはあぁ見えても、ほんまに好きな相手には奥手やから大丈夫や」との事。
心配しながらも、アントンに報告した。
「ム」の時にいつも以上に顎が出てた。
でも、本当に営業男を好きになった頃から、アントンは暴れなくなった。
恋の力って凄いって思った。
ベテランさんとクリステルには、いい加減にしろと言われていたけどAKOは解散しなかった。
最初は嫌だったが、アントンミッションを友近さんが答えを出してくれ、私はそれを実行するだけだので、結構楽だった。
が、事件は起きた。
久々にワンマン社長が「皆で飲みに行こう」と言ってきた。
私は暇だったのでOKした。
ほかの人も営業男もOKした。
もちろんアントンもOKした。