彼女:23歳 某アパレルメーカーの商品部OL 初任給分からないけど20万~
考えながら、付き合ってたんだよ
彼女はファッション系にこだわる人だから、「そんな底辺みたいな仕事しないで」
ってよく言うんだよ。
たしかにブルーカラーっぽい格好して仕事行くけど、
製造とかきつくて汚れるようなことは会社でやってないし、
むしろ立場的にはそこそこなんだよね。
10万円定期預金してるから、既に300万くらい持ってるし
そのお金で将来起業して、内容は言いたくないけどある程度の
成功する算段もあってコツコツ頑張ってんだよ
で、彼女と言ったら無駄な出費が凄くて、特にブランド物の
バッグとかアクセサリーとかすごい買うから、確かに自分の
お金で買う分だからいいし、まだまだお互い結婚費用のために
生活を削るとかケチくさいこともしたい年頃じゃないからそう言う所は
文句を言うつもりも俺は無かったんだけど、でもそうやってる彼女と
堅実な俺と、どっちの方が実際にバカにされる人間かって思ったの
大企業じゃないからね。ベンチャービジネスだよ
コネのある先輩らが起こした会社に入社した。
俺が入社する頃には安定してるって言われてたから
まあまあ今のところ良い感じ。長くは続ける気ないけどね
俺も起業するか、(今後必要になってくる事業があるから)
ある程度の会社に転職するか、って感じ。今の会社に
入るために必要な資格や勉強もしてきたし、とりあえず
今の会社で経験積んで、後はどうとでもなるって計画
やっぱりプライド高いんだよね。特に彼女なんて、容姿も頭もいいから
人一倍に強いと思う。しかも誰もそれに言い返せないって感じで
俺は「あんまりそう言う高飛車な態度はよくない」っていつも彼女に言ってるから、
彼女も俺の前では”ある程度のライン”になったら高飛車な態度は
自制してくれるんだけど、それがどうしても許せないラインを越えた時があったんだよ
保険料や厚生年金や諸々差し引いた手取りに計算しても、30万前後で
でもそれは”俺がそれくらい貰うに値するほど働いてるから”
であって、決して楽して貰ってるわけじゃないんらよね
実際、知り合いの若い代表の人のコネで俺は入社してある程度の
優遇はあるんだけど、それは”仕事の能力として”の優遇であって
決して感情論や、馴れ合いの優遇じゃないの。そう言うのも分かって
俺はコネを受け入れて入社したから、仕事はほんと大変なの
何でもアパレルメーカーの商品部での仕事が縦社会でつらいって言ってて、
自分がブランド物を買うのも、ファッションにこだわるのも、そう言った職場の
環境に付いてくためもあるからって、それを彼氏に分かってくれないって
色々俺に対してもグチってたんだよ。(俺はそう言うことは”黙認”してるだけで
反対はしてない。けれどどっちかというと分かっていなかったから黙って聞いてた)
でも俺もその日はめちゃくちゃ働いてて、すっごい疲れてたの
ちゃんと話を聞いてないことにイライラしだして、俺も彼女がずっと
“俺が悪いから”みたいな話されてることにイライラしだして、で
彼女が「ある程度のラインを超えちゃったの
「こんな底辺のブルーカラーと付き合わなければ良かった」
「お前と一緒に居ると恥ずかしい。付き合ってる意味がない」
・・・
と、色々と彼女が今まで”言わないでいたと思われる言葉”を
次々と俺に浴びせてきたの
で、ヒートアップした彼女はもう止まらない。彼女は近くにあった
香水のビンを俺に向かってぶん投げ、割れ、匂いのキツイ中身が
俺の上半身にぶちまけられた。
俺の体からは香水独特の匂いが立ちこめ、ずぶ濡れになったシャツが
肌に張りつき、不快感が一気に上昇する。
一つだけ
一つだけオレハ、今まで彼女に言わなかったことがあった
オレはテメエのコウスイのニオイが、ダイッキライだったんだよッッッ!!
彼女の顔を思いっきりぶん殴った
ゴリッと子気味いい音が右手から伝わる
彼女はそのままバランスを崩し、リビングの床に倒れ込む
彼女は殴られたことでさらに怒り狂うよりも、
冷静さを取り戻したように呆気な顔をしていた
彼女はおそらく、俺が”何をやっても怒らない人間”だと
根底では思って居る節があったと思う。事実、俺も23年間
人に対して怒った記憶が無く、今後も怒らないで問題を
解決する方法を取るだろうと、自分自身でも思っていた
ただし今回の場合は、
“一方的に俺が悪いと言われている”
“俺だって今日は仕事ですごく疲れている”と
「怒ってもいい要素」が重なっていたと思った
許されたと思った。俺が怒ってもいいんだと
一瞬で冷静さを取り戻していた彼女は、状況がよく
掴めないようだったが、構わず俺は丁度良い場所にあった
彼女の体、サッカーボールを蹴るようにして思い切り
蹴り抜ける。何度も。何度も。踏み付けるように、踵で、
つま先で、右足が痛くなったら左足で、何度も。何度も
今まで溜め込んだ、ガマンした、憤りを、全て彼女に返すために。
服を裂き、まだ青あざが付いてない場所を分厚い辞書のような本で
殴る。全身に、刻みつける。教え込む。お前の行いが、悪かったと
反省できる”形”として残すために
そうしないと、そこまでしないと、この女は分からない。きっと
これからもこうやって生きて、人に迷惑をかけ続ける。だから
その責任を、俺がまっとうする。正す。今まで言葉で分からなかった女には、
暴力で、傷で、トラウマで、ストレスで、恐怖で、痛みで、後悔で
まだ分かっていない
だから俺は顔を殴り続けた
まだ分かっていない
だから俺は腹を蹴り続けた
まだ分かっていない
だから俺は首を絞め続けた
そして彼女は、ようやく分かってくれた
俺を困らせないように仕事も辞めてくれて、同居しているマンションを
毎日の様に掃除してくれて、炊事や洗濯といった家事もこなし、
夜はちゃんと俺の性処理に付き合ってくれた
何故なら少しでも俺の気に入らないことをすると、殴られるからだ
分かってくれていた。単純なことだった
すごく気分がよかった
その順序が逆でも、彼女は受け入れてくれた
例えば暴力から入っても、彼女は俺の言う事を聞いてくれた
馬をムチで叩いて走らせるように、
彼女も軽く方を殴るだけで俺の言う事を聞くようになっていた
部屋のドアノブにタオルを引っかけて、首をくくって死んだようだった
俺は驚きもせず、悲しみもしなかった
警察には仕事に悩んで辞めてから、彼女の様子がおかしくかったと説明した
彼女は俺がしつけをした日から、外には出していない
なぜなら、体中のアザを人に見られるとマズイと思ったからだ
俺は彼女の葬式で、泣きながら弔辞を読んだ
もっと自分が相談に乗れたら、もっと自分に力があれば、と
俺は彼女のご両親にずっと謝り続けていたが、
彼女のご両親も泣きながら俺を慰めてくれた
それから俺と彼女のご両親は、彼女が勤めていたアパレルメーカーに
民事訴訟を起こした。判決は勝訴、3000万円の慰謝料を手に入れた
俺はその3000万円を全てご両親に渡し、配分は受け取らなかった
あれから彼女のご両親とは連絡も取っていない
俺は未だに、彼女が何故自殺したのか分からないままだ