「ビショビショにしてごめんなさい。飲み物粗末にしてごめんなさい。」とひたすら謝っていた。
大将が笑顔で「気にせんでええよ」と言ってた。
ベテランさんはクリステルや私たちにも謝ってきた。
私は結構飲んでたせいか、何故か号泣してた。
アントン以外の人が良い人すぎて涙が止まらなかった。
大将にアイスを貰って、皆がタクシーに乗せてくれてお家に帰った。
ベテランさんは素直に謝ってた。
謝ってるベテランさん見て、ちょっと心苦しくなった。
この日のアントンはいつも以上に不機嫌だったけど、営業さんが買ってきたケーキを食べたら機嫌良くなった。
人数分のケーキなのに、外出してた営業さんの分まで食べてた。
それから数日間アントンはちょくちょく問題を起こしたけど、皆普通に過ごしてた。
皆大人だと思った。
ベテランさんと凄く気が合うらしく、2人は仲が良かった。
よく私と友近さんも誘ってくれて、4人で飲みに行ってた。
ベテランさんとクリステルは「ほんと私たち不良主婦だねぇ」って言ってた。
何回に一度は社交辞令でアントンも誘ったけど、「彼氏と会うから」と言って来なかった。
しかも皆に聞こえるくらい大きい声で言ってた。
ブスでデブで忄生格悪いうえに難聴かと思った。
如いて言うなら、親が金持ちって事だけ。
この金持ちっていうのも嘘かと思ってたけど、社長曰くこれは本当らしい。
そんなアントンにある朝一番「飲みに行こう」と誘われた。
しかも二人きり。
助けを求めようと周りを見るとベテランさんが口パクで「行って来い」って言った。
クリステルは何故か指でOKサインしてた。
友近さんはニヤニヤしながらPCの画面に向かってた。
基本、女忄生陣はお弁当持ちだったので休憩室で食べてたんだけど、金持ちアントンだけはいつも外食してた。
4人になった時、あのOKサインと「行って来い」の意味を聞いた。
すると、友近さんがとんでもない事を言い出した。
「アントンは営業に好きな人おんねんで」
全く意味が分からなかった。
3人からプロポーズをされてるはず。
100歩譲ってそれが嘘だとしても、今までの醜態を見せてて好きになるも何もないもんだ。バカかと思った。
しかも、なぜ私がアントンと2人で飲みに行かないといけないのか。
全く意味が分からなかった。
これといって芸能人に似てる人がいないので、「営業男」ってよびます。
営業男は32歳、独身。まぁシュッとした感じの人。
どうしてそれが分かったのか聞くと、皆が「見ればわかる」と言ってた。
大人だなぁって思った。
ベテランさんとクリステルは、アントンもきっと一人で寂しいはず。
自分達にはあまり話しかけてこないけど、晴美(私です)は気に入られるようだから、ちょっとでも歩み寄ってやろうじゃないかと、他人任せだけど大人な考えを言ってきた。
どうしても営業男を生贄にするのかと聞くと、「片思いでもいい。好きな人が側で仕事をしてるだけで落ち着くかもしれない」という。
とりあえずアントンの相談を受けて、適当に立ち回れ。もちろん力は貸すからと。
友近さん1人張り切っていた。
人の恋愛感情を弄ぶのは禁止とも言われた。
でも私は友近さん命令で生贄となった。
アントンは本当に金だけはあるらしく、結構高そうな店に連れて行ってくれた。
まずはビールとワインで乾杯。
料理を注文しようとメニューを見てみると、本当にお高い。
ふとアントンを見ると、キモイくらい目を細めて煙草に火を付けてた。
結局、スルメの天ぷらはなかったから適当に頼んだ。