私が中学校のとき、クラスにいじめられている転校生(男)がいた。
当時の私は正義の味方気取りなとこがあったから、ある時、また弁当を捨てようとしていたので、そいつの首根っこを後ろから掴んでそのまま押し倒した。
そいつは自分が人を殴るのに、自分が痛い目するのに慣れてなかったせいか、みっともなく泣き喚いた。
多分、自分はそいつと、その取り巻きに「みっともないことをするな」と言い捨て他ような気がする。
本当に地獄で、あっという間に登校拒否になって、その後ほとんど学校に通わず、高校は単位制に通った。
私が学校に行かなくなってしばらくして、助けた転校生が、私の家に訪ねてきて、男のくせに泣きながら
「自分をかばったばかりに、ごめん。俺はまたもうすぐ転校するからほっといてくれてよかったのに」と
おもいっきり恩を着せたい気分だったけど、やったものにお礼を要求するようでかっこ悪いと思ったので、このときもなんかカッコつけなことを言ったように思う。
ときどき、転校生と私をいじめた奴らが国立大学に進学しただの、医学部に合格しただのを漏れ聞くたびに
転校生を助けてしまった自分が愚かしくて、当時の中二病的な言動も相まって、胸をかきむしっていた。
さらに時が流れ、こんな私も、高校の時の先輩に飲みに誘わてた時に、出会った年上の男と付き合えて、結婚までした。
夫の家は自営業だから、私たち夫婦は夫の家族と同居になった。
あまり運のない私だけど、夫はもちろん、義父母もとても優しく気さくで世間で言う嫁姑問題なんてかけらもなく幸せな生活をしていた。
このご時世、零細企業を助けてくれるような銀行もなく、次の融資を断られたら一家離散というところかで追い詰められた。
夫も義父母も私に八つ当たりなどはしないけど、日に日に家の中の空気は重くなっていた。
その空気はやっと授かった娘にまで伝わったのか、あまり夜泣きをしない子だったのに、なにもないのにギャン泣きすることが多くなった。
そして、最後の融資のお願いに夫婦揃って、銀行に出向いたが、案の定、答えはノー。
夫婦してがっかりしながら家に帰ると、スーツをきたクマのような大男が座敷に座って、義父母と話をしていた。
借金取りか!?と身構えると、そのクマ男は、私に気がつくととても嬉しそうに「○○さん!」と旧姓で読んだ。
きょとんとしていると「俺だよ、俺!転校生の○○だよ!」と。
小柄で気弱そうな転校生がクマになっていてわからなかったけど、確かにあの転校生だった!
曰く、この街に親戚が住んでいるから遊びに来ていて、昔のことだけど、あの後私がどうなったか気になっていたので
実家を訪ねてくれたそうだ。そして、私親から、私が結婚して、その婚家の事業が資金難で立ち行かなくなっていることを聞いて、
クマ男の親にもそのことを話すと、ぜひ助けてさしあげろということになったそうだ。
義父母はひれ伏す勢いだったし、夫は私の横ではらはらと涙を流していたので、私もつられて不覚にも泣いてしまった。
そして、クマ男の会社からの融資によって危機を乗り越えて、今の私達の生活がある。
クマ男と私をいじめていた奴らに特に天罰は降っていなさそうだけど、私は彼を助けた因果に救われた
助けたあなたも本当にいい人だぁ
よかった!
んで、クマ男もその直後に良縁に恵まれて結婚して、遠方だけど、交流があり、
クマ男夫婦の息子と私達の娘も大変仲がいい。
我ながら波乱の多い半生だったけど、この幸せが続くことを切望している。
後日談も良いね。
しかし教師ってほんと糞だな。
くま男もあなたもいい人だ。幸多き人生でありますよう。