割りのいいバイトがあるぜと先輩に言われ、俺と他数人は二つ返事で了承。
いまいち不明だったが特に気にしなかった。力仕事でもあるんだろうと。
当日、チーフっぽい黒木瞳似のおばさんより仕事の説明。何十枚もの人物写真を見せられる。
俺「…何すか?この人達」
瞳「今回の御両家の婚礼を、快く思わない方々です。
もし現れたら……タックルとかで、ヨロシクね!(はあと)」
ホンマに来るとは思わなんだ、18の冬。今となってはいい思い出だ。
ジェットストリームアタックを6人がかりでやったりしたっけな……
不倫略奪婚かなんか?
来たのは何人?
さあkwsk
何その面白そうな結婚式wwww
どんな感じでジェットストリームアタックをかましたかだけでも
・・・と食いついてはダメかしら?
それも乗り込んで来そうな奴らがいるのを分かってて式をする人たちって凄いよね。
なんていうか・・・どっちもどっちって感じで
もったいぶった割に大した話でなくて申し訳ない
式はいわゆる「身内だけで慎ましく」ってやつで、20~30名の小規模なもんだった。
事情は詳しくは聞かされなかったが、先輩曰く「奪還婚」で、新婦側の親族が強烈に反対してたらしい。
多分、両家とも結構な資産家だと思う。何故なら撹乱の為か、大部屋を幾つも抑えてたから。
式が始まって少しすると、高級車に乗ったオッサンオバサン連中が押し掛けて来た。
ヤクザ…ではないと思う。少なくとも見た目は普通だった。
「会場はどこだ。通せ」「では招待状を」「我々は親戚の者だ」「お引き取り下さい」
前半は正規のスタッフがやりあってて、俺達の出番はなかったが
後半、どんどん人数が増えて場が混乱してくると、徐々に前線が押し込まれてきた。
終盤は頭に血の昇った連中がどさくさ紛れに切り込んできたが、なんとか死守した。
一人、若僧がスタッフ用の搬入扉から会場に侵入しかけてたんだが
ギリギリで気づいたラグビー部総員によるジェットストリームアタックをくらいボロ雑巾みたいになってた。
結局、会場は守りきった…が、この話にはオチがあった。
実はこの式自体、囮としての偽装式で新郎新婦はもちろん親族も偽物。
本物は遥か遠方で同時刻にしっかり式を挙げていた。
ちなみに、偽親族の中で唯一新婦の父親だけは本物で、
囮役を努める為に娘の結婚に立ち会うことを諦めた、漢の中の漢。
テレビ電話で新婦と話ながら泣き笑いしてた。
以上、高校時代の思い出話でした。
囮のために会場いくつも抑えてダミーの結婚式するなんて。
金持ちのやることはよく分からん。
それほどの金持ちなら、親族だけで海外挙式もできそうだけどな。
しかしほんとどういう事情だったんだろう
すごい世界があるんだな