元気いっぱいに
前の夫は釣りが趣味で、交際時期にはよく魚を持ってうちに遊びに来てた
一人暮らしの狭いキッチンとやっすい包丁で魚をさばくのは骨が折れたけど「俺の嫁になるならどうか覚えて!」と頼まれたのでついその気になった
小料理屋をやってる叔母に頼んで料理をひととおり習った(←両親が他界してから親代わりだった人)
魚のさばき方は、叔母の知人の料理人にわざわざ教えてもらった
道具もそろえたから大物のブリだって鯛だってさばけるし、魚料理に限って言えば、結婚する頃には「うちで出してもOK」と叔母のお墨付きもらえるくらい上達した
結婚3年目に夫が釣り仲間とものすごく大きなブリをつってきた
釣り仲間から魚拓を取らせてと頼まれるくらい大きくてまるまる肥えてて腕が鳴った
叔母の店を借りて解体し、ブリ大根とブリ刺し、ブリしゃぶを振舞った
釣り仲間は喜んで食べてくれたけど、ふと気づくと夫だけ食べてなかった
友達と二人で釣りに行って釣っていたら隣のおっさんが海に落ちた。
釣り歴が長かったから当然海に落ちた時の対処法とか俺らは知っていた。
すぐに浮遊物を投げ込んだ。
このときはベースが遠かったからおっさんのクーラーボックスをひっくり返して投げ込んだ。
おっさんもおっさんで対応を知っていたみたいだからありがとうってクーラーボックスを掴んで浮かび上がりひと段落。
俺と友人がロープを取ってきますってベースに戻って水汲み用のロープと自分たちのクーラーボックスを引っ掴んで戻った。
既におっさんは防波堤からはるか遠くに流されていた。
わずか30秒も経たない間の出来事。